Short Story

□気遣い屋な彼といじっぱりな彼女
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彼女は手に持っていた航海日誌をテーブルに置いたけれど、彼女はなかなか座ろうとはしなかった。


「あら、座らないの?」
「ん……座る、けど……」


いつもはきはきとした彼女にしては曖昧な返事だ。
どことなく気弱な感じを含んでいる。
その理由を探していると、彼の金髪が視界に映った。


「なるほど……ごめんなさい。気付かなかったわ」
「え?」
「私、お邪魔だったかしら。隣に座りたいのでしょう?」


彼女の顔が赤く染まる。どうやらこの理由で間違いない。
素直じゃない彼女が何と返すのか、簡単に想像がつく。


「そっ、そんなわけないじゃない!!変な事言わないでよ!!」


想像通りの言葉を放ち、彼女はまるで当て付けのように彼から一番遠い位置に座った。

本当に分かりやすくて可愛い子。
彼の隣にいたいのに、素直に甘える事が出来ないなんて。


「ふふっ、今ここにいるのは私だけよ。ナミ、少し素直になってみたらどうかしら?」


席を立ち、彼の隣を空ける。彼女はどうするのかしら。
彼女は少し迷うように視線を泳がせた後、緊張した面持ちで立ち上がった。
それから、真っ赤な顔でキッと彼を睨み付けて、彼の隣に乱暴に座った。
彼が起きてしまうのではないかと思ったけれど、彼は少し動いただけで起きなかった。
どうやらかなり疲れているようね。


「……疲れてるならベッドで寝ればいいのに」


ぶっきらぼうな彼女の声。そこに見え隠れする優しさと心配な気持ち。
それは小さな呟きとなって虚空に吸い込まれていく。


「私もそう思うわ」


聞こえていると思っていなかったのか、彼女は少し驚いた表情を見せた。
けれど、その表情はすぐに心配な色を帯びた穏やかな微笑みへと変わる。

どうして彼がこんな所で眠ってしまったのか、彼女には分かっているのだろう。

 
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