Short Story

□backbone
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「ルフィ!盗み食いすんな!」
「少しくらいいいじゃねぇか〜」
「だめだ!アホ!」


目の前で繰り広げられる会話を聞きながら、エプロンを着て奔走する人物を見る。
少し不機嫌そうなその表情は、お母さんのそれとはとても似つかないのだけど。


「うぅ…腹減ったぁ……」
「……ったく、仕方ねぇな。これで我慢しろ」


ルフィへと差し出されたサンドウィッチ。彼がさっきから作っていたものの一つだ。
ルフィはそれを口一杯に頬張ると、まるでこの世で一番の幸せ者のように笑った。
ルフィのその笑顔を見て、彼は呆れたような表情で微笑んだ。

それは、まるで――。


「――……お母さんみたい」
「へっ?」


彼の顔から微笑みが消え、驚きの表情が顔を出す。
彼の笑顔をもう少し見ていたかった気持ちがあるという事実が、少しくすぐったい。


「ナミさん?」
「ナミ、何か言ったか?」


二人は不思議そうに私を見ている。
曖昧に笑って誤魔化そうとしたけれど、一度何かに興味を持ったルフィの意識を逸らす事が出来ないのは十分すぎる程知っている。


「……似てるな、って思って」


ゆっくりと彼を指差すと、彼は目を見開いた後に穏やかな表情を浮かべた。
どうやら彼は少しの言葉で私の気持ちを察してくれたらしい。

一方、ルフィは首を傾げている。
普通の人間では有り得ない方向に首が曲がっているけれど、そこは気にしない事にする。
彼とルフィの理解力の差は天と地くらいあるなぁ、なんてぼんやりと思う。

 
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