Short Story

□それが望みなら
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名前を呼ばれた先にいるのは、オレンジ色の可愛い君。普段は見せてくれないようなはにかむような笑顔が眩しい。

君がその笑顔を見せるのは、決まった時しかない。
笑顔に隠された君の目的を知っているおれは、どうしましたか、と先手を打って聞いてみる。


「お願いがあるの」


君が計算してやっているのは分かっているのに、それにあっさり引っ掛かってしまうのは、おれが心底君に惚れてしまっているから。

君のお願いを断ろうなんて考えた事は無い。
それがどんなに無理難題だとしても、君が喜んでくれるならおれはやってのけてみせる。


――みかんの木の世話を手伝って。

――荷物持ちをして。

――紅茶を淹れて部屋まで持ってきて。


君の様々なお願いに対して、おれの答えは変わらない。というか、承諾以外の他の選択肢なんて存在しない。


「……あんたって何頼んでも嫌な顔しないのね」


驚きからか、それとも呆れからか、君は溜め息を零す。
ナミさんのためですから、と笑顔で答えると、君はもう一度深い溜め息を吐いた。今度の溜め息はおそらく呆れから出たものだろう。

 
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