Short Story

□アメリカンブルー
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抜けるような青さに澄み切った空に、白い雲が気持ちよさそうに自由気ままに漂っている。
空の青さをそのまま映したかのような海は穏やかに世界を揺らしている。
温暖な気候の中で時折吹く優しい風が丁度良い。
それらが絶妙に重なり合い、午後の心地良い微睡を作り出している。


程良い賑わいを見せる港に停泊しているサウザンド・サニー号は、今日に限っては普段の騒々しさとは無縁だった。

基本的にサニー号から騒々しさが消えるのは早朝か夜中のどちらかである。それ以外は、子供のような船長を筆頭に何人かが騒いでいるのが常で、それを呆れたように見る者や微笑ましそうに見る者など、反応は様々である。


先刻とある島に到着した“麦わらの一味”は各々で行動している。騒がしい船長及び船員は元気よく島を探検しに行っているため、今の静寂が実現している。

そんな貴重な静けさを堪能しながら、ナミは目の前の活字に目を走らせる。航海中は主に航海術に関する本ばかり読んでいるナミだが、今は島に停泊しているため別の本を読んでいた。
船を包み込む静寂は、以前から読みたいと思っていた本に集中するには十分すぎる程だった。

静寂の中、時折ナミの耳が何かの音を捉える。意識をしていなければ聞き逃してしまいそうな音に、しかしナミは苛立つような事は無い。
むしろ穏やかに微笑むその姿は、普段のナミを知っている者から見れば驚きを与えるものかもしれない。


「これはあれに使って……」


本に向けられていたナミの意識が自然と音のする方向へと向かう。
その先にいたのは、食材を手に何やら考え込んでいるサンジだった。

停泊している島に買い出しに行ったサンジが戻って来たのはつい先程の事である。
料理人であるサンジは島に到着すると、必ず真っ先に食糧を仕入れに向かう。
今回も例外ではなく、サンジは大量の食糧を手に入れてきた。そして、買い物に行きたかったにも拘わらずくじ引きで船番を引き受ける事になってしまったナミを気遣ってか、サンジはすぐに船に戻って来たのである。

 
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