Short Story
□気遣い屋な彼といじっぱりな彼女
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日が落ち始めて少し冷えてきた頃、コーヒーを貰うためにダイニングに行くと、珍しくサンジがテーブルに伏せて眠っていた。
椅子に無造作に掛けられた彼のジャケットが彼の疲れをよく表しているように見える。
働き者のコックさんはきっとこの船の誰よりも疲れているはずなのに、こうして眠っている姿を見るのは数えられるくらいしか無い。
「コーヒーを淹れてもらいたかったのだけれど……」
疲れている彼を起こすのは気が引ける。
自分で淹れてもいいのだけれど、自分では彼の淹れてくれるコーヒーの味を引き出す事は出来ないので諦める。
脇に抱えていた本をテーブルの上に置き、彼の隣に座る。特に深い意味は無い。
ただなんとなく彼の傍は居心地が良いのだという事は以前から知っている。
不意に、扉の外に誰かの気配を感じた。
こういう気配に聡くなった経緯は決して喜ばしいものではないけれど、これは最早特技と言っても差し支えない代物となっている。
けれど、その特技が無かったとしても、その気配が誰のものなのかはすぐに分かる。
この時間にここに来る人物は、私は一人しか知らない。
「あれ、ロビン?」
予想通りの声が聞こえ、涼しげな格好をした航海士が姿を現す。
彼女は露出の高い服をよく好むけれど、最近は特に露出の高い服を着る事が増えた。
それが何故なのか理由が分かるから、本当に可愛らしいと思う。
彼女の視線が私の隣に移る。
それから、一瞬寂しそうな表情になる。
「サンジ君、寝てるの?」
「えぇ。私が来た時にはもう眠っていたわ」
「…そう」
彼女はがっくりと肩を落とした。とは言ってもそう見えただけで、実際には彼女は気丈に振る舞っているけれど。