Short Story

□それはやっぱり君でした。
3ページ/6ページ


ナミさんはおれの手元を見たが、すぐにお手上げと言うように手を振った。


「分からないから教えてよ」
「出来るまで秘密」
「えっ!?いいじゃない、教えてよ!」
「秘密」
「…サンジ君って最近意地悪ね」


ナミさんは唇を尖らせて不平を言っている。ナミさんの言葉に思わず笑ってしまう。

ナミさん、気付いてねぇの?
おれが意地悪する女性はナミさんだけなんだぜ?

そうかな、とわざと言うと、ナミさんは少し不機嫌になったようだった。気まぐれな彼女の機嫌を損ねると後々大変だ。


「じゃあ、ヒント」
「はぁ?ヒント?」
「おれがナミさんに意地悪する理由、知りたいだろ?」
「…どっちかって言うと、何を作っているのかを知りたいんだけど」
「それは出来てからのお楽しみって事で」
「……じゃあヒント頂戴」


何だかんだ言って、ナミさんはおれの言葉に応えてくれる。前なら軽く無視されていただろうし、おれ自身ナミさん相手にこんな事を言う事はなかった。
そんな変化が愛しいなんて、おれも相当ナミさんに惚れてるな。今更だが。


「おれが意地悪するのはナミさんだけです。これがヒント」
「はぁ?何なのよ、そのヒント」


ナミさんはおれのくだらねぇクイズに真面目に考え込んでいる。
悩ましげに動く睫毛を横目で見ながら、フライパンでみじん切りにした玉葱を強火で一気に炒める。玉葱が少し色付き始めると、すぐさま弱火にし、時間をかけて炒めていく。

 
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ