Short Story
□気遣い屋な彼といじっぱりな彼女
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「ん…ぁ……」
まだ眠そうな声が響く。
見ると、彼は目を開けて身体を起こしていた。
「あ、れ?ナミさん…とロビンちゃん?」
まるで図ったようなタイミングに少し笑ってしまう。
彼女は彼を少し睨み付けた後、すぐにまた俯いた。彼は彼女の行動の意味が分からず首を傾げている。
少し可哀想だと思う。起きたばかりの彼には状況が分からないでしょうに。
「疲れは取れたかしら?」
「ん〜、まだ少し身体がダルぃ……って、疲れてねぇから大丈夫だよ!!」
彼は慌てて否定するけれど、やはり彼には疲れが溜まっているようだ。
寝起きで気の抜けている時でなければ、彼の無茶を隠そうとする仮面を剥がす事は出来ない。
普段なら絶対に身体がだるいなんて事は言わない。特に、私達に向けては。
本当に気遣いが上手な人だと思う。
きっと、私が出会った人間の中で一番。
「って、なんか寒くなってきたなぁ。ロビンちゃん、コーヒーでも淹れようか?」
「お願いするわ」
ダイニングに来た本来の目的がようやく果たされる事に嬉しさを覚える。
勿論、彼を無理矢理起こしてまで飲みたかったわけではないから、いいのだけれど。
「ナミさん、紅茶飲む?」
ダイニングにいる人間への配慮は絶対に忘れない。例えそれが男であっても。
それがコックさんである彼の信念とも言えるポリシー。
「う……っ」
「あれ?ナミさん、顔赤いけどどうかした?」
事情を知らないから仕方ないでしょうけど、それは聞かない方が賢明よ。
「そっ、そんなわけないでしょ!!」
照れ隠しをする時、いじっぱりな彼女は怒ってみせるのだから。
「は、はぁ……で、ナミさん紅茶でいいよね?」
彼女のようなタイプの人間に対して、深く聞こうとしない彼は合っていると思う。