Short Story
□future
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いつも通りの喧騒から彼は一人離れ、煙草に火を点けて海を見つめる。
一人で海を見つめる彼の表情が見れなくて、彼の隣で、同じように海を見つめた。
きっと、私が見ている景色と彼が見ている景色は違う。
「ん?ナミさん、どしたの?」
彼の見ている先が怖くて、私は小さくなる。
夢を前にした彼の前では、私はなんて小さいんだろう。
「……見つかると、いいわね」
絞り出した言葉は海に呑み込まれていく。
どこまでも広がる青が瞳に映る。
彼が目指す場所も、青に包まれた世界なんでしょうね。
「…うん。ありがと、ナミさん」
たった少し言っただけで、彼は私の言葉の意味を察してくれる。
そういう所、やっぱり好きなんだよなぁ、って思う。
「いやぁ、嬉しいなぁ〜!」
「えっ、何が?」
「だってナミさんがおれの夢を導いてくれるんだぜ?これ以上嬉しい事はねぇよ」
本当に嬉しそうに笑う彼は無邪気で。
私の心がどうなっているか、きっと知らない。
「あっ、悪ぃ!勝手に騒いじまって」
そう言って、彼はまた海を見る。
青に包まれた世界に呑み込まれていく。