彼女のバスケ

□第4Q
1ページ/2ページ

「おお〜広〜〜。やっぱ運動部に力入れてるところは違うねー」


日向がそう言う。

日は流れ、今日は海常高校との練習試合だった。

『……火神くん、いつにも増して悪いです。目つき』
「るせー。ちょっとテンション上がりすぎて寝れなかっただけだ」

どうやら、昨夜は『やるぞ〜見てろ黄瀬〜てか早くこい明日〜〜〜』と、燃えており寝れないまま朝を迎えたようだった。

『……遠足前の小学生ですか』


そう呆れ、苦笑をこぼしたとき。


「どもっス。今日は皆さんよろしくっス」
「「「黄瀬……!!」」」


黒いシャツを着た黄瀬が、向こうから走ってきた。


「広いんでお迎えにあがりました」
「どーも」


リコ先輩がにこりと言うと、黄瀬くんはこちらへ半泣きで駆け寄ってきた。

「テツナっち〜あんなアッサリフるから……毎晩枕を濡らしてんスよ、も〜……
テツナっちだけっスよ、オレをフッた女の子は……」
『……サラッと嫌味言うのやめてもらえますか』


「だからテツナっちにあそこまで言わせるキミに……テツナっちを落としたキミには、ちょっと興味あるんス」
「落と……っ!?」
「ま、「キセキの世代」なんて呼び名に別にこだわりとかはないスけど……あんだけハッキリケンカ売られちゃあね……」


「テツナを落とした」、と言う言葉に驚く火神をよそに、黄瀬は言葉を続ける。


「オレもそこまで人間できてないんで……悪いけど本気でツブすっスよ」
「ったりめーだ!」
「テツナっちのことだって、渡さないっスから」
『別に火神くんとはなにも、』
「ハッ。上等だ」
『火神くんも否定してください』



テツナの否定の言葉は、その後の2人の言い合いによりスルーされていた。



(まさか火神君って……!?面白いことになってきたわね……っ!)
(カントクの目が生き生きしてんだけど)




―――――――
――――――
―――――
――――
―――
――






「あ、ここっス」

案内された体育館は、片面に区切られたコートだった。

「え?……片面……でやるの?」

もう片面を見ると、そこは練習中だった。

不思議に思っていると、海常高校の監督、武内がやってきた。

「あぁ来たか。ヨロシク。
 今日はこっちだけでやってもらえるかな」
「……こちらこそよろしくお願いします。……で、あの、これは……?」



リコの問いに、武内は答える。


今日の試合は、海常は軽い調整のつもりだと。

だが出ない部員に見学させるには、学ぶものがなさすぎると。

無駄をなくすために、他の部員には練習をしてもらっているということを。


「だが調整と言ってもウチのレギュラーのだ。トリプルスコアなどにならないように頼むよ」


そう、つまりは練習の片手間に相手してやる、と誠凛をナメてかかっているのだ。

誠凛の誰もが米神を引くつかせた。

そんなこちらのことには気づかず、武内はユニフォームへと着替えていた黄瀬へと声をかけた。

「黄瀬、オマエは出さんぞ!」
「え?」
「各中学のエース級がゴロゴロいる海常の中でもオマエは格が違うんだ」
「っちょ、カントクやめて。そーいう言い方マジやめて」
「黄瀬抜きのレギュラーの相手も務まらんかもしれんのに……


 出したら試合にもならなくなってしまうよ」


ふう、と溜息をつきながら言った。



「「「なっ……!!」」」
「すいませんマジすいませんっ

 大丈夫、オレベンチには入ってるから」

武内の後ろ姿を指さし、黄瀬は慌てたように言う。

「あの人ギャフンと言わせてくれればたぶんオレ出してもらえるし!オレがワガママ言ってもいいけど……。




 オレを引きずり出すこともできないようじゃ……「キセキの世代」倒すとか言う資格もないしね」



「オイ誠凛のみなさんを更衣室へ案内しろ!」

武内がそう声を出し、移動することになった。

近づき、クイッと黄瀬のユニフォームを引っ張る。


「っ!な、なんスか?」
『……? アップはしといて下さい。

 ・・・・
 出番待つとかないので』


身長差で上目遣いになっていることに気づかないテツナは、顔が微かに赤くなっている黄瀬を不思議に思いながらも、そう言い放った。


そんなヨユーはすぐになくなると思いますよ



クスリ。黄瀬が笑った。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ