肝試しなう!

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「ふはっ、やっぱ追いかけて来やがったか」

「アイツ足早いな」

「ちょ、あの子可愛い顔してなんかいろいろ怖いんだけど」

「あたし的には真顔で走ってる古橋の方が怖いかなぁ」

「そうか?」

「いいから前むいて走れよ!」





静かな、暗い廊下を6人の男女がバタバタと大きな足音を立て、走っていた。

その後ろには、童顔でかわいらしい笑顔を浮かべた、下半身がない女が、物凄い速さで追いかけて来ていた。



「原ー、その本に乗ってないの?退治法とか」

「ちょい待ちー。……あ、暗くて読めないわ」

「懐中電灯があるだろう」

「いや、片手だかんね俺」

「頼むから黙って走ってくれ!!」

「もー、ザキさっきからうるさい」



呑気に会話をしながら、角を曲がる。


ガンッ!!


一時的には撒けたらしく、後ろからの足音はしなくなった。
多分、方向転換ができないから壁にでもぶつかったのだろうと思う。
先ほどの音はそれだろう。



ざまぁ、なんて声が聞こえた気がした。



「ひとまずそこの教室入るぞ」


真に促され、教室のドアに手を伸ばす。



ガッ



「さっすがエリート校。警備も万全か」

教室のドアには鍵がかかっていた。
当たり前だ。

試しに窓にも手を伸ばし、開けようとしてみるが開かない。



「関心してる場合じゃないっしょ。また来るかもよ、あの女」

「仕方ねぇ。
 ひとまずドア蹴り破れ


真がそう指示を出し、瀬戸が溜息をつきながら、手に持っていたカバンを思い切り――――



振り回した。




▼△▼△▼△▼△▼





どうしてあたしたち6人が、真夜中の校舎で女に追いかけられていたかと言うと。





「そーいや、この学校の七不思議とかって聞かないよねー」

という、原の何気ない言葉がきっかけだった。



「あー。確かにな。他のとこではよく聞くけど……」

「まぁうちの学校、いい子ちゃんばっかりだしな」

「だからないのかな?」

「かもしれないな」

「……と言うか、なぜ原は突然そんな話をしだしたんだ」

「いやさ、さっき読んだ本で七不思議特集やっててさ〜」

「ふぅん……あ、七不思議と言えばさ、花子さんって定番だよね」

「だな。後は……ベートーベンの肖像画の目が光る、とかか?」



そこから、こんなの知ってる?と、それぞれが自分の知っている学校に纏わる怖い話を上げていったのだった。



そして、原は言った。

もしかしたらホントはあるんじゃないのかと。

ただ、夜中にいい子ちゃんたちが来ないだけではないのか、と。

だから、

「肝試し、してみよーぜー」








夜中の0時。
あたしたち6人は、霧崎第一高校の門の前に集まり、校舎へと入った。

そして懐中電灯であたりを照らしながら歩いていると、



テケ   テケ……



「オイ、なんか今聞こえなかったか?」

「は?なに、ザキ」

「いや、今なんか……」

「気のせいっしょー」

「あたしたち以外にいないでしょ、こんな夜中に」

「ふはっ なんだよザキ。ビビってんのか?」

「うるせぇ!……ってほら、」



テケ テケ テケ……



「今なんか聞こえ―――――」


振りかえったザキは見る。



ニコリと笑う、可愛い可愛い、


「ッ――――!!」





下半身のない女を。






「? なに、ザキ。いきなり静かになっ……
 あ」

「は?」

そして全員が後ろを向き、


「うわ、なんかいる」

「に、逃げんぞ!」


――― 一斉に逃げ出した。


テケテケテケテケ





「ふはっ、やっぱ追いかけて来やがったか」







そして冒頭へと戻り、今へと至るのだった。






▼△▼△▼△▼△▼




ガコンッとなんとも派手な音を立て、ドアは外れた。


「おー、さすが瀬戸」

「蹴り破れって言ったのにカバンでドア壊すところがすごいよねー」

「……これ、なんで警報とか鳴らないんだ?」

「さぁ。なんでだろうね」


ひとまず円になり、状況確認をし出す。


「あ、あったあった。ほらこれ」


さきほどから原が手に持っていた本は、原が七不思議特集をやっていた、と言っていたものだ。

座り込んでなにやらページを捲っていたのは、追いかけてきた女の子が載っていないか調べていたらしい。


「テケテケだって。下半身ないから方向転換できないっぽい」

「あぁ、だからさっきぶつかった音したのかー」

「まじあの女ウケたんですけど」

「花宮、ざまぁって言ってたよな」


ケタケタ笑う原。
先ほどの真の言動にツッコむザキ。


「あ、そうだ。お菓子持ってきたんだよね俺」

「はぁ?」

「ナイス原ー。食べよ食べよ」

「お前ら、怪奇現象に出会ったばっかだっつーのに……なんも変わんねーのな」


呆れたのか疲れたのか、はたまた両方かはわからないが、ザキは溜息をついた。


「あはは、当たり前でしょ?」


真のほうが怖いじゃん。


そう笑って返せば、真がふはっ、と1つ面白そうに笑った。


 

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