短編


□ホワイトバレンタイン
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2月14日


地球ではバレンタインという日だった。


何やら、好きな人に愛を伝える日らしい


ちょうどその時


あたし達春雨は地球にいた。


バレンタインか…


あたしも神威にあげてみようかな…


でも、甘い物嫌いだし…


「んー」

どうしたものか…


「名無しさん〜」

バレンタインのことでなやんでいると

後ろから神威に抱きつかれた

「どうしたの?」

「名無しさんで充電中」

「ふふ、お疲れ様!」

「ったく、元老の奴ら少しは気つかえっての」

「神威、最近忙しいもんね」

「名無しさんとイチャイチャする時間が減る…」

「イチャイチャって///」

神威は本当に疲れたような顔をしていた。


何か、神威にしてあげられることはないかな?


「ねぇ、神威」


「んー?」


「あたしに何かできることない?」


「名無しさんは俺の隣にいてくれるだけで十分だヨ」


「そ、それだけじゃなくて…」


「じゃぁ、キスして?」


「え?」


「名無しさんからキス、そしたら俺、仕事頑張れそう」


そ、そんな事言われたら…

「目、つむって?」

「ん」

神威はそっと目を閉じた。


あたしは神威の綺麗な顔に手をあて

キスをした。

チュ

小さく奏でた音

自分でしたのだと実感すると恥ずかしくなってきた。

「ありがと、でも、足りないなぁー」


神威は意地悪そうに言うと、今度は自分からキスをしてきた。

「んっ、はぁ…っ」

甘く、深いキスを


あたしは神威を止められることなんてできなくて…

されるがままだった。

「ん…っふぁ…」


キスが終わるとあたしは肩で息をしていて

「ご馳走様」

神威は自分の唇をペロッと舐めると、満面な微笑みをした。


やっぱ、神威にはかなわないや…

あたしからそっと離れると神威はルンルンしながら部屋へと戻って行った。


その姿を見送った後、ふと空を見上げた

空からは雪が降ってきていて


ってことはホワイトバレンタイン?

最近また寒くなってきたし

神威も任務から帰ってきた後は寒かったって言ってるし


マフラーでも編もうかな?

その日あたしは、こっそりと神威に見つからないように船をでて、マフラーを編むための材料を買いに行った。


あれこれ目に映ったら気になって買いすぎてしまった結果


荷物はすごく多くなってしまった。


「もっと計算して買えばよかったかも…」


すこし後悔しながら船へと戻り、すぐに自分の部屋へと入った。


今から徹夜でやれば間に合うよね

一日遅れたバレンタインになっちゃうけど…

それからあたしは何時間も編み物に集中した。

朝の10:00からやり始め、集中しすぎたせいか


完成した時はまだ19:00だった


あれ?結構余裕だったなー


でも間に合ってよかった!


あたしはルンルン気分で神威がいる食堂へと向かった。

神威に「何でそんなに機嫌が良いんだい?」って聞かれたけどなんとかそこは無理やり嘘をついて乗り越えた。

マフラーのことは渡すまで秘密にしないと!

食堂でご飯を食べ終わるとすぐに部屋に戻り

完成したマフラーをラッピングして

走って神威がいる部屋に行った。


神威の部屋はあたしの部屋から走って5秒の距離


すぐに辿り着き

ノックをしようとしたら

部屋から阿伏兔と話しているのか、声が聞こえた。

「団長ー、このチョコの量どうするんだよ」


「知らないよ、阿伏兔食べなよ」


「あ、そーいえば名無しさんからもらってないのか?」


「五月蝿いよ阿伏兔、調子に乗ってると殺しちゃうぞ」


「団長が言うと背中が凍りそうだよ叔父さん」


「そうかい?じゃ凍ったら粉々にしてあげるよ」


か、神威凄いこと言ってるな

「団長らしいね〜」


「とりあえずそこのチョコやらなんやらは処分して、俺は名無しさんのしかいらない」

ドキ

今、あたしの、しかいらないって言ったよね?

嬉しすぎて涙出てきそうだよ…

「そうですかー、ったく惚気やがってコノヤロー」

「阿伏兔もはやく良い彼女つくりなよ」

「はいはい」

阿伏兔は適当に返事をするとガサガサっと大きい袋をもって出てきた。

部屋から出てきた瞬間、あたしが外にいたからびっくりした目で見られた。

「早く渡してやれよ?」

阿伏兔は小さな声で言うと神威の部屋から離れて行った。
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