ぬくもり
□第1話
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5日後、緋龍城では16になる私の誕生祝いの宴が行われた。
「うっうっうっ…16かっ。サクラも立派になったなぁ」
「おめでとうございます姫様」
「おめでとうございます」
『父上やっぱり今日も髪がもはもはしてる。結い上げたかったのに。あ、あれ美味しそう』
「駄目だこの娘。髪と食べ物のことしか頭にない…みんなにごあいさつしなさい」
『あれ食べたらね』
そう言って私は料理が並ぶテーブルの方へ行こうとした。すると私に向かって手をふっているスウォンが目に入った。
『やっほー』
「サクラ、手を出してください」
スウォンは会うなりそんな事を言ってきた。私は素直に右手を出すと一本の簪をのせた。
『綺麗だね』
「すみませんこんな所で。サクラに似合うと思って手渡したかったんです」
『ありがとう。でもくせっ毛だから上手くまとまるかな。それに赤毛だし』
そう言って私は自分の髪を触った。するとスウォンは私の髪からひとふさとった。
「私は好きですよ、サクラの髪。キレイな紅…暁の空の色です」
小さい頃から私を妹のように可愛がってくれたスウォン。そして私も兄のように慕った。その人が言うのなら…
『…スウォンがそう言うなら少しだけ好きになれそう、かもしれない』
「そうですか。それはよかった」
そう言って優しく微笑んだ。
「よかったですね姫様」
『ハク。羨ましいの?貸してあげようか?』
「喧嘩売ってるんですか」
『売ってないよ。それよりどうしたの?一人で寂しかったから来たの?』
「サクラ…その辺りにしないと…」
スウォンはそう言うとハクの方をみた。ハクは顔は笑っていたけど額に血管が浮かび上がっていた。
「陛下が探していましたよ姫様。さっさと行ってください」
『また酔っぱらったの?なら行きたくない』
「いいから行け」
わー怖い怖い。ハクが怒らないうちに早く行こ。
私はハクが本気で怒らないうちに父上の元へ向かった。
『外…武器でいっぱいだった』
あれから日が落ち私の誕生祝いも終わった。だけど衛兵がいつもの何倍もいて誰もが武器を持っていた。
みんな長い剣持ってたなー。ハクはいつも持ってるけど…あれ何だっけ?大刀?んー…武器は詳しくないから分かんない。一度も触れたことないし。
そう言えば父上も武器は嫌いって言ってたな。どんなことがあっても絶対武器は持たなかった。そして私も武器は禁止されていた。触ることはおろか近づくことさえも。
『だから臆病って言われるんだね』
でも本当のことだし仕方ない。でもそんな父上が好きだから別に、いい。
『かなぁ…』
あ、そう言えば。スウォンから高そうな簪もらったってまだ言ってない。ちゃんと言わなきゃ。
そう思った私は部屋を出た。外は静まり返っていた。
宴会の後は静かなものだね。すごい静か。皆お酒飲みすぎなんだよ。父上もだいぶ酔ってたなぁ。明日は二日酔いかな。
『ならゲロゲロね』
二日酔いになってダウンしている父上を想像して私はふふっと笑った。
でも父上もう寝てるかも。駄目だったらスウォンのとこ言ってお喋りしようかな。昔みたいに。あ、ならハクも呼ぼう。
そんなことを考えているうちに父上の部屋の前に到着した。
起きてるかな。……あれ?入り口が開いている。
部屋の前までくると扉が少し開いていた。
いくら酔ってるっからって危ないよ。仮にも国王なんだから衛兵の一人くらい置かなきゃ……
そう言えば何で衛兵がいないの?それに私がここに来るまで一人も会わなかった。あまり部屋から出ないけど城内に何人か衛兵がいるはず…だよね。
私は控えめに少し開いていた扉を開いた。
『父上…』
ピチョン…
何かが床へ落ちる音
月光に照らされる、二つの影
そして一つの影が倒れた
ドサ…
『ぁ…っち、父上!?』
それは私の父上だった。
どうしてっ…一体何が…口から…胸から血がっ!!
私は倒れてピクリとも動かない父上の元へ膝をついた。
『父上……父上…っ』
ピチョン…ピチョン…
『っ…』
何かが床へ滴る音と、私に近づく影。
「………ああ…まだ起きてたんですかサクラ姫」
『……スウォン…?』