舞桜

□錠剤?粉?いえ、ジェルでつるん派です
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ななななななんだコレはァァァァァァ!?

『山崎さん!!!!一体何を塗ったんですか!?つーかザラッて言わなかった!?』

沖「あははははははっははは!!!!」

山「何って、ただの薬ですよ」

『んな訳あるかァァァァァァァァァ!!塗られた瞬間電気走ったぞ!?静電気程度じゃないからね!?ピカ●ュウの十万ボルト並みだからね!!!!一体全体何ですかそれ!!!!』

斎「これは石田散薬だ」

『い、石田散薬?』

斎「切り傷打ち身どんな傷でも飲めばすぐに治るという優れものだ」

『だからといって傷口に直に刷り込む!?どー見ても飲み薬でしょ!!!!』

山「万能薬なので大丈夫です。さあ、早く傷を見せてください」

そう言って山崎さんは石田散薬片手にじりじりと私に近づいてくる。

やっ……これは……

『塗られてたまるかァァァァァァァァァ』

スパーンッドタドタドタッドタドタドタッ!!!!

山「あ!!!!」

斎「待て桜!」

待ってたまるかァァァァァァ!!

私は全力で廊下を走る。もう風になれるんじゃないか、風と一体化できるんじゃないかと思えるほど走った。

私が走り目指す先は…

『原田さぁぁぁあん!!』

ドタドタドタッスパーンッ

原「うおっ!桜じゃねぇか」

『原田さん原田さん原田さん原田さん原田さん原田さん原田さん原田さん!!』

平「どうしたんだよその傷?」

『うぉぉお!!平助少年!!!!』

そう、私の避難場、それは原田さんの部屋。今日は平助少年もいたみたい。

『ちょっと聞いてよぉぉお!!いきなり沖田さんに背中突き飛ばされて体と顔に傷できて、そしたら斎藤さんと山崎さんに手当てって言われて石田散薬っていう激物を顔面に擦り付けられたぁぁ!!それがスッゴい痛いのォォォ!!』

平「えっ!?お前傷口に石田散薬つけられたのか!?」

『山崎さんにたっぷりつけられたぁぁ!!ホントいったいんだよコノヤロー!!』

平「さっ、災難だったな…」

はははっと苦笑いをする平助少年。その横で原田さんも苦笑いをしている。

『万能薬でも塗るときあんだけ痛けりゃ意味ねーよ!!』

原「万能薬?石田散薬がか?」

『そう!斎藤さんが切り傷打ち身どんな傷でも飲めばすぐに治るって言ってた!!』

私がそう言うと原田さんはいきなり真面目な表情になり、私をじっと見た。

原「いいか、よく聞けよ?」

『…?はい?』

原「石田散薬は……インチキだ」

・・・・・・ぱーどぅん?

『え…でも斎藤さんは万能薬だって…』

え?え?どゆこと?

原「石田散薬は土方さんの実家で作ってる薬なんだ。材料はそこら辺に生えてる雑草。当然そんなモンが効くはずもねぇ。石田散薬が効くと信じているのは斎藤だけだ」

『……マジですか』

平「あれすっげぇ苦ェしよぉ……不味いだけで少しも効かねぇんだよ」

原「それにホラ、その証拠に傷口すげぇ真っ赤になってるぞ。それどー見ても擦り傷だけで赤くなった訳じゃねーだろ」

…………………それ…ただの…

『インチキじゃねェェェェかァァァァァァァァァァァァ』

とんでもねぇもん顔面につけやがったなコンチクショオオオオオオオオ

『じゃあ何!?山崎さんは分かっててそのインチキ薬をつけたのかァァァ!?』

平「山崎くんだけじゃなくて皆知ってるぞ?」

『じゃあ沖田さんのあのニヤニヤはそういう意味だったのかァァァァァァ』

やられたァァァァァァ!!くっそぅ!!沖田総司!やっぱり死すべし!てゆーか山崎さんも山崎さんだ!!知っててあの激物を塗るなんて……やっぱりSだ。

ドタドタドタッ!

山「桜さん!!どこですか!?」

斎「薬を塗るだけだ!出てこい」

障子の向こうから微かに山崎さんと斎藤さんの声が聞こえた。

『やっばい!!じゃっ、私もう行くね!!』

原「斎藤には気を付けろよ?アイツ石田散薬絶対主義者だからな」

『……絶対逃げ切ってやる!!』

そう言って私は原田さんの部屋を出た。そして次に行く部屋は、石田散薬を生み出した家系の一人……

『土方コノヤロォォォォォオ!!』

ドタドタドタッスパーンッ!!

土「っ!!」

『今すぐ全身全霊で私に土下座をしろ!!』

土「あ゛ぁ?何で俺がお前に土下座しなくちゃならねぇんだよ!!」

『何でもへったくれもないですよ!!貴方があのインチキ薬をここに持ち込まなければ私が傷口に激物を擦り付けられることもなかったんですからねぇ〜っ!!ホラッ!分かったなら土下座しやがれ!!』

土「分かるか!!……はぁ…何があったんだ」

『簡潔に言うと、沖田さんのせいで怪我をした私に斎藤さんが山崎さんに石田散薬を渡して、その石田散薬を傷口にこすりつけられました』

土「それは…さぞかし痛ェだろうな」

『他人事みたいに!!…ホント泣くかと思ったし!!薬塗られて涙が出そうになったの10年ぶりぐらいでしたよ!?それに傷悪化してるし!効かないし!!』

土「効かねぇんじゃねぇ。石田散薬は飲んでも飲まなくても効果は対策がないだけだ」

『それを世の中では効かないって言うんじゃボケ!!もういい、死んでわびやがれ!!!!』

このどうしようもない怒りを目の前にいる土方さんに更にぶつけようとしたその時、廊下から騒がしい足音が聞こえてきた。

まっ…まさか…

ドタドタドタドタッスパーンッ

山「副長失礼いたします!!」

『失礼しなくてよろしい!!そのまままわれ右してかえれェェ』

山「いい加減にしてください桜さん!」

『いい加減にしてほしーのこっちだっつーの!!』

私はヤタヤダと言いながら土方さんの後ろに隠れた。

斎「我が儘を言うんじゃない。薬を塗らぬことには治るものも治らんだろう」

沖「次は僕が塗ってあげるから痛くないよ」

『余計痛いわっ!!つーかその両手に持っている大量の石田散薬は何だコノヤローッ!!』

山崎さんと斎藤さんはこれでもかっと言うほどの石田散薬を抱えている。沖田さんにいたっては縄を持っている。

……オイオイオイオイ沖田さんよォ…その縄はなんだい?まぁさか、それで私を縛り上げるつもりじゃぁ〜…

沖「……ニヤリ」

『縛り上げる気満々かいな!!!!』

くっそぅ……!こうなったら!!

私は後ろから土方さんの肩を掴んで前へ出した。

『私に薬を塗りたくば!!この鬼の副長こと土方歳三の屍をこえてくるのだな!!ぶははははっ』

沖「それじゃあ仕方ないねぇ…土方さんには悪いけど死んでもらおうかな」

土「何でそうなる!!」

『ゆけーっひじかたん号!私の平和のために戦うのだ!!』

土「ひじかたん号!?だから何でそうなる!?俺を巻き込むんじゃ――」

『え?何々?茶色いマントと顔面があんパンにならなきゃやる気がでない?ったく…しょーがないなー。ちょい待ち。今バタコ呼んでくっから』

土「誰もんなこと言ってねェだろーが!!つーかバタコって誰だ!!」

『えー…友達で「嘘つくんじゃねェ!」

ゴツッ!!

『いってエエエエエエエエエ!!』

土方さんがいきなり立ち上がって私の頭を拳骨でぶん殴った。それも力強く。

『何さらしとんじゃァァァア頭に衝撃与えてこれ以上馬鹿になったらどう責任とってくれるんだワレコラァア』

ゴツッ!!

『痛っ!!』

土「てめぇはもう手遅れなくらい馬鹿だろーが。いいからさっさと山崎に石田散薬塗ってもらえ」

『ぬぉぉおぉぉっ……ドタマが割れた…』

多分、今私の頭のてっぺんからは白い煙がでてたんこぶが出来ているであろう…

うっ…うううっ……年頃の娘相手にグーで殴るとか…

『うわぁぁぁあん!!はじめお母さぁぁあん!!』

レッツ、本日二回目の一ママ抱きつき。

べっ…別に…どさくさに紛れて抱きつけてラッキーとか思ってないから…いい匂いするグヘヘとか思ってないから!!

ダキッ!!

『パピィーが…トシお父さんが二回も殴ったぁぁあぁあ』

斎「だから始めから俺の言うことを聞いておけば良かったんだ」

『うんっ…私が悪かった!!次からはお母さんの言うことは絶対聞くね!!』

沖「手のひら返すの早いね桜ちゃん」

『それはそれ、これはこれ』

山「なら、薬を塗りますよ。こっち向いてください」

………………それはそれ、これはこれ…つーことで、

『塗らせはせん!!塗らせはせんぞオオオオオオオオ』

ダッダッダッダッダッ!!

山「あっ!!」

沖「逃げたねぇ…」
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