舞桜

□時にはマジになっちゃうぞ
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それから私達は人気がない細い道を小走りで走っていた。

沖「こっち」

グイッ

『おわっ!!』

急に引っ張んないでよ!そんなことしたら…

ズコッ

『あ』

ズサーーーッ

『………いひゃい…』

沖「…よく転ぶね 桜ちゃんって」

『…どーも』

沖「ほら 寝っ転がってないで行くよ」

『こーなったの誰のせいだよ…』

沖田さんに差し出された手をとって立ち上がった。すると沖田さんが私のことをじっと見てくる。

『…なに』

沖「…ぷっ」

…はァァァァア?!

『何いきなり笑ってんだよコラァ!!言っとくけど転んだのは沖田さんのせいだかんねェ?!』

沖「あはは……ちがくて、」

沖田さんが私のほっぺに手を持ってきて

沖「顔 砂で汚れてる。これじゃあますます不細工になっちゃうよ」

『どぅわれが不細工じゃァア!!』

沖「はいはい 大人しくしてて」

『ぐえっ』

沖「もっと色っぽい声だせないの?」

ちがうちがうちがうちがうちがうちがう!!首しまってるっつーの!!何で顔についた砂とるのにわざわざ首しめるんだよ!!この状況でどう色っぽい声を出せと?!

沖「はい とれた」

パッ

『ぐはっ!!……し、絞め殺されるかと思った…』

沖「やってあげようか『結構です』

こいつ…総悟よりやっかいだ…こっちの沖田は表情が読めない分、次何をしでかすか分かったもんじゃない。
私は首をおさえながら沖田さんを睨んでいると後ろから声がした。

「あんたが最近新選組に新しく入隊した月ノ瀬桜だな」

私はゆっくりと振り返った。

『あら 私って有名人?』

沖「あーあ 桜ちゃんが転んだせいで追いつかれちゃったじゃん」

『それは沖田さんが私をひっぱったからだ。私に非はない。で、なんの用?』

私が攘夷浪士どもに問うとボソボソっと小声でしゃべった。

「…やはり女であったか……我々はあるお方から新選組の女隊士を連れてこいと命じられた。女 我々と共に来てもらおう」

…あるお方?

『…嫌だって言ったら?』

「力づくにでも」

そう言って攘夷浪士たちは刀に手をかけた。

『だってさ。どうする?沖田さん』

沖「ここでついて行ったら、土方さんの説教と山南さんの説教が待っていることになるよ」

『土方さんはいいとして…山南さんの説教は死んでもくらいたくないです、はい』

山南さんの説教くらうくらいなら…不逞浪士20人と仲良く刀で斬り合った方が100倍はマシ。ホント 山南さんだけは勘弁してほしい。

『つーことで、大人しくお家に帰って親孝行でもしてなさい!まったく…最近の子はこんなところで女なんか口説いて…こんなことしったらお母さんが泣くよ?号泣もんだよ?顔から出るもん全部出して泣いちゃうよ?』

「ふ…どうやら口で言っても分からぬようだな……いくぞ」

チャキッ…

おうおうおう!!刀抜きやがった、もう知らねー。

『沖田さん 不本意だけどここは力を合わせていきますよ』

沖「不本意ってどういうことかな?」

『そのまんま』

「余裕かましてられんのも今のうち……っだ!!」

あらあらまぁまぁ怒らせちゃったみたい。
私と沖田さんは刀を抜いて

沖「いくよ桜ちゃん」

『へーい』



























ゲシッ

「うっ」

『つまんなー弱すぎ』

偉そうな口たたいて向かってきたから少しは強いと思ったのに。

沖「桜ちゃん それ踏んでるよ」

沖田さんは私の足元を指差しながら言った。

『ゴミは踏んでもいいっていう私の中の決まりがあるの』

こんな攘夷浪士なんてゴミ以下だコノヤロー。……つーか…

『結局何が目的だったんだろ?沖田さん こいつら中の誰かの恨みでも買ったんじゃないの?』

沖「さぁね。僕はこんな奴ら知らないよ。わざわざ桜ちゃんの名前を確認したんだから桜ちゃんじゃないの?」

『向こうの世界ならあり得るけど…こっちに来てからは大人しくしてるよ』

沖「桜ちゃんたちがいた世界では思い当たる節があるんだ」

『まぁ…私がたまたま通りかかったところに攘夷浪士のアジトがあって、一人でぶっ潰すってゆーのはよくあった。それでよく副長に怒られてた』

沖「…はじめて土方という名前の人に同情したよ」

あっちじゃ日常茶飯事なんだけどなぁ…

『ま、今はそれはいいとして』

沖「いいとしちゃうんだ」

いいとするんだよ。

『さっきこの男が小声で言ってたんだよね。“やはり女だったか”って』

沖「それって桜ちゃんが女だってバレてるってことだよね」

『そーゆーこと!んで、そこでおかしなところは』

沖「何でそれを知ってわざわざ巡察中の僕らに近づいたのか」

『それと…』

私は沖田さんから目をはなし地面でのびている男共を見た。

『コイツらが言ってた“あのお方”ってのは一体誰なのか』

まぁ巡察中の私達に近づいたのは何となく理解できる。あの男所帯の新選組に女がいるのは珍しいこと。一度目にしたいって思いと、女を餌に新選組を潰そうとでも考えていたんだろうね。でもそこに“あのお方”って言葉が絡んでくると…

『コイツら…誰かに雇われたとか?その あのお方ってゆー人に。それかただの部下とか』

沖「その辺りだろうね。あと女だってバレたのは…まぁ見る人が見れば分かるからね」

『そーだよ「胸はおいといて」んだとコルァア!!』

人並みにはあるっつーの!!ったく…風間も沖田さんも失礼なんだよ!!

沖「でも 連れてこいっていうのは分からないな」

『あ、それは 私を餌に新選組をつぶ「明らかに凶暴そうなのに」そっちかィィイ!!つーか凶暴そうってどーゆー意味だああああ!!』

沖「あははは まぁ冗談はこのくらいにして……いや 冗談でもないかな」

そこは冗談にしとけやぁぁぁあ!!

沖「最近攘夷浪士の動きが活発になってるって言ってたし、どこかの物好きが手下に命令して桜ちゃんを連れ去り、その桜ちゃんを餌にして新選組を潰そうと思った馬鹿な連中だって事だね」

『まぁそー考えるのが妥当だね。こいつら可哀想なくらい弱かったし。(ボソ)………あの視線もコイツらだったのかな…』

小声で少しうつむいて喋ると沖田さんが下から顔をのぞいてきた。

沖「あの視線って?」

『沖田さん 地獄耳だね』

沖「よく言われるよ」

そーですか。……まぁ沖田さんになら言っても別にいいか。

『ここ二、三日 屯所の外に出ると誰かの視線を感じるような気がしてたんだよね。まぁ一人の時とかはよくつけられたけど、その度にまいてやったし 別に大丈夫かって思って放置してたんだけどさ。その視線がコイツらだったのかなってね、まぁそーだろうけど』

沖「僕もそう思うよ。屯所に忍び込んでいないのを見ると、この下に寝っ転がっている浪士の仲間だったんじゃないのかな」

『ですよねー。まっ、そんだけの話だよ。それよりコイツらどーする』

私は足でちょんちょんとのびている浪士を軽く触った。

沖「連れてくの面倒だね」

『じゃー、暫く動けないように身ぐるみ剥いでくか』

沖「桜ちゃん やること悪人だね」

『私に斬りかかった罰だ。普通なら皆殺しにしてるところだったんだから、ありがたく思ってほしいね』

私はしゃがみながら服を脱がし刀で切り刻んでやった。
ハッ!!この桜様に刀を向けるとは愚かな奴らよ!!グハハハハハ!!

沖「声に出てるよ」

『もう慣れたでしょ』

沖「慣れたくなかったけどね。終わったなら帰ろう。一応土方さんに報告しなくちゃだから」

『そーだね。あ、最後にこいつらの小銭「それ以上はやらなくていいから」えぇー』

沖「えぇじゃなくて帰るよ」

グイッズルズルズル

『ひっぱるなァア!!着物がのびる!!これ斎藤さんに借りたやつなんだから!!って…何でさっきより力加えてんの?!いや マジ斎藤さんに怒られるからやめて?!斎藤さんに怒られるとか嫌だから!!のび太ママみたいにお説教長そうだから!!最近斎藤さんお母さんキャラだからノリノリでお説教しちゃいそうだから!!だからやめて!!ねっ?!沖田さん ねっ?!』

沖「一くんは怒ると面倒だから気を付けてね」

『だったらこの手を離しやがれェ沖田ァァァァアアア』

それから私は屯所まで沖田さんに引きずられながら帰りました。もちろん着物はヨレヨレあーんど砂でぐしゃぐしゃ。斎藤さんに怒られ土方さんに“巡察サボるたァどういう了見だ!!”って感じで怒られたし 山南さんには“桜さん?(ニッコリ)”って 目の圧力でお説教をくらいました。…久々に恐怖を感じました。

まぁ…もう寝よ。あ 手紙読むの忘れてたー。…明日でいっか。寝よう。

私は自分の部屋に向かって歩きながらあくびをした。そして障子をあけて部屋へ入った。

神楽ちゃんはもう寝てるね。じゃ、私も火ぃ消してさっさと寝よ。明日は朝稽古ザボんないよーにしなきゃな。

私はそんなくだらないことを考えながら眠りについた。



これからあんな事が待ち受けているのにも知らずに。
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