蜂蜜果蜜

□蜜二十六滴
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「桜!そっちにいたか!?」

『いないけど』

「なっ…もっと真面目に探せ!!」

『白っくんと違って私の真面目は四時間も続かないの』

「だから白っくんと呼ぶな!!」

『すぐ怒鳴るなよ…うるさいな』

そう言うとますますイラついた顔をする白っくんこと朽木白哉。

私達は四時間前から森の中を仲良く走り回っている。その理由はひとつ。ある人の一言が全ての始まりだった。

“儂と鬼ごっこせんか?”

はい、皆さんももうお分かりの通り夜一さんですね。

いつも通りに夜一さんに拉致られた私は朽木邸に連れてこられた。そして白哉を巻き込み修行をかねての地獄の鬼ごっこが始まった。

今日仕事だったのに…何なんだよ。つかまえるまで帰れないって。何故に私を巻き込む?毎回毎回。それに鬼ごっこって…鬼は私達かよ。瞬神夜一を捕まえられるわけねーだろが。

「あの化け猫…!!どこに行った!?」

『この地球上のどこかにはいるんじゃないの?』

「そんなの知っている!!ふざけるのも大概にしろ」

『ざけんな。ふざける気力なんざ残ってねーよ。身も心もボロボロだっつーの』

そして見た通り私も白哉も長時間走りっぱなしでイライラ度MAX。白哉に至ってはここ二、三時間眉間のシワがとれてない。

「何故…何故見つからない!!霊圧の気配すらしないぞ!!この私が奴ごときの霊圧を辿れないとは…っ!!」

『隠密機動現司令官を奴ごときと言うか。霊圧辿れる訳ないでしょ。普段から霊圧消してんだから』

「馬鹿を言え!!私は等の昔に奴の霊圧は辿れるようになった!!」

『現に今できてないじゃん』

「そっ…それはっ…」

『はいはい、白っくんはまだ夜一さんには及ばないってことで。そろそろ休憩しますか』

「待て!別に私はっ!!」

『別に私は?』

「…っ!!」

『言い返せないなら最初から突っかかんなよ…ほら、座ろ』

そう言って木の根もとに座ると、納得がいかない顔で白哉も遅れて座った。

なんてめんどくさい奴なんだ。口喧嘩勝てないって分かってるくせに突っかかってきてさ。そのくせプライドは高いわ、ツンデレだわ。なんか…思春期突入したばっかの優等生の中学生みたい。

私はそんなことを思いながら走って出た汗を拭った。白哉は私以上に汗だくで、着物の袖を肩まで捲り上げた。

『お前…意外とガッシリしてんな』

「バカにしてるのか?朽木家次期当主たるもの毎日の鍛練を行うのは当然のことだ。桜のようにひょろひょろではいられん」

『別にひょろひょろしてないけど。つーかもやしっ子に言われなくないわ。何その肌の白さは。光合成しろ光合成』

「私は植物ではない!それに断じてもやしっ子でもない!!」

『そうですか〜』

「貴様っ…信じてないな!?」

『信じてるって。心の底辺から信じてるよ白哉くーん』

「嫌な言い方をするな!!」

『一々文句が多いな…』

お前はどうしてもらえば満足するんだよ。その意地っ張りなとことか無くなれば、普通にカッコいーんだけどね。向こうの世界じゃモテモテだよモテモテ。

いや、私は全くもってタイプじゃないけど。

「もうこの森にはいないのか…桜はどの辺りにいると考える?」

『さぁねー。まぁ夜一さんのことだから屋敷にもどってお茶菓子でも食べてるかもね』

「有り得るな…よし、一度屋敷へ戻るぞ。休憩はここまでだ」

そう言いながら白哉は立ち上がった。

『また走んのか…』

「いや、もう走らない。瞬歩を使う」

『白哉くん?お姉さんもう疲れたんですけど。足ガタガタなんですけど』

「情けないぞ。それでも護廷十三隊の三席か?」

『何だよその見下したような目は。可愛くないやつ』

「いいから立て!今日中に帰れなくなるぞ?また残業するはめになるんだぞ?それでいいのか!」

……なんだ、この妙に説得力のある言葉は。確かに…残業はもう嫌だ。金出ないし。

『行きますか…』



















「はぁっ…はぁっ…はぁっ…」

『ゲホゴホッ…はぁぁぁっ…』

い…いねーじゃねぇかよ…

私達は瞬歩で屋敷まで戻ってきた。そして屋敷中を隅から隅まで探した。しかし、夜一さんは見つからなかった。

そして私達は虫の息。

「いっ…いないではないか!!」

『私が知るかっ…』

「くっ…もう夜の九時だぞ!!いつまでやるつもりだあの化け猫!!」

『もう…また平子隊長に怒られる!藍染さんにもっ…ダブル説教だ!!』

「私ももう夕食の時間が…今夜は爺様が戻られるというのに!!どこへ消えた四楓院夜一!!!!」

私達は茜色から闇の色へと変わった夜空を見上げながら叫んだ。近所迷惑とかそんなの考えない。

『もう帰る』

「私ももう屋敷へ戻る」

そして私は白哉に背を向けて朽木家の門へ向かって歩き出した。

「待て、送っていく」

『別にいいよ。そんな真夜中じゃないし』

「駄目だ。夜に女子を一人で帰らせるわけにはいかない。五番隊舎まで送っていこう」

『なに?私が帰り道誰かに襲われるとでも思ってんの?有り得ないでしょ』

私がそう言うと真面目な顔で白哉はこう言った。

「それもそうだな…誰もこんな子供相手にするわけ『張っ倒すぞクソガキ』有り得ないと言ったのは桜だろう!!」

『言い方ってもんがあんだろーが。白っくんサイテー』

「何だとっ…誰が最低だ!!」

『白っくんがサイテー』

「二度も言うな!!それから白っくんと呼ぶな!!」

いーじゃんか。ケッコー気に入ってんだけど、白っくんって。何か可愛くない?本人はかなり可愛くないけど。

目の前で眉間にシワを寄せる白哉を見ながら私は手を上げた。

『それでは、もやしっ子白っくん、また会うぞ』

「だからっ…何度も同じことを言わせるな!!」

『白哉も早く屋敷の中入りなよー。最近暖かいっつってもまだ風冷たいんだから』

「話をっ…はぁ……気を付けて帰れ」

『はいよー』

そして私達はお互い自分の家へ向かった。するとその時空から、ずっと血眼になって探していた主の声が聞こえた。

「まだ儂を捕まえとらんではないか!!白哉坊!桜!」

「なっ…四楓院夜一!!!!」

『夜一さん!!!!』

夜一さんは逃がさんと言わんばかりの勢いで私たちの目の前に降りてきた。

「勝負を放棄して帰るつもりか!!根性が足りんぞ根性が!!」

あんたの根性がどうかしてるだけだろ…

「主ら二人とも!儂を捕まえるまで晩飯抜きじゃ!!」

「『はぁっ!?』」

「良いか?あと一時間以内に捕まえなければペナルティーで筋トレ追加じゃ!!良いな!」

『あっちょ、待っ!!』

シュンッ…

・・・・・・・。

「『はァァァァァァァァ!?』」

夜一は一瞬にして私たちの目の前から消えた。爆弾発言を残して。そして唖然とする私と白哉の後ろから聞き慣れた声が聞こえてきた。

「桜チャーン、こないな時間まで何しとんねん。帰んでー」

「白哉、そろそろ屋敷へ戻ったらどうじゃ。帰るぞ」

『夜ご飯…夜…ご飯…抜き……』

「ペナルティー…筋…トレ……」

私達は二人の声が全く届いてなかった。晩飯抜きとペナルティーで頭が一杯で。

そんな私達を不思議に思ったのか平子隊長と朽木隊長は再び声をかけてきた。

「聞いとんのか?帰んで桜チャン」

「どうした白哉。屋敷へ帰るぞ」

「『だから帰れないんだってば!!!!!!!!!!』」

「「っ!?」」

いきなり出した大声に隊長たちは驚いた。だが私達はそれどころではない。

「桜!お前は右から回り込め!!」

『任せろ!!そっちはよろしく!』

「『絶対一時間以内に取っ捕まえるっ…!!!!』」

シュンッシュンッ…











「何しとんのや…アイツら」

「四楓院家の当主と何やら遊んでいるようじゃな」

「遊ぶて…あんな必死こいてやるもんやったか?」
 

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