蜂蜜果蜜

□蜜二十一滴
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「お早う」

「おはようごさいます!」

『おはようごさいます』

「お早う」

「おはようごさいます副隊長!第三席!」

「お早う」

『おはようごさいます』

はい、朝からお早う連発の桜と藍染さんです。

今日は式典があるということで、私たちは平子隊長を起こしに隊首室へ向かっているところです。

私たちは隊士と挨拶を交わしながら歩き、隊首室の前まで来た。

『おはようごさいまーす』

「ご準備よろしいですか隊長?」

「おー、ええで入っても」

「失礼します」

『失礼します』

平子隊長の声に答えて藍染さんは襖を開いた。襖を開くと鏡と向き合っている隊長の姿があった。

朝っぱらから鏡と見つめあってんのかよ…

「何や、フツーのカッコやんけ」

平子隊長は振り返って私達を見るとつまんなそうな顔をした。

「お祭りやぞ。キラキラのカッコしてこい言うたやろ惣右介。桜チャンもいつもと変わらんやんけ」

「隊長こそ」

「オレはええねん隊長やから」

『意味分かんないです』

「僕らだけ面白い格好させようとしてもダメですよ。そもそも今日はお祭りじゃなくて式典です」

「お祝いやからお祭りみたいなモンやろ」

『全然違います』

式典とお祭りが一緒なわけないでしょ。どーゆー思考回路してんのよこの人は。

「…ところで、さっきから流れてるこの音楽は何ですか?」

そう、この部屋に入ってから聞こえてくる音楽。この時代には珍しい音楽だ。

『ジャズですか?』

「そうや、よォ知っとるな。現世の新しい音楽や。ええやろ」

「よく分かりません」

『同じく』

「…じゃあなんで話フッたんや…」













「もしもォ〜し!!五番隊隊長の平子真子ですけどォ〜!!誰か開けてんか〜」

声でかっ…

一番隊舎の門の前で大声を出す平子真子の隣で私は耳をふさぐ。

「…しっかし一番隊舎はいつ来てもゴッツイなァ〜緊張してまうわ…せやから俺ここ来たないねん」

「それが緊張してる人の顔ですか?式典が面倒だからってダダこねないで下さい」

「うるさいなァ。そっちから顔見えへんやろ惣右介ェ」

そう言って隊長はチラッと後ろを向いて藍染さんの方を向いた。

『してるじゃないですか。子供じゃないんですからしっかりやって下さい』

「…最近惣右介に似てきてへんか桜チャン?」

『そんなことないですよ。そうですよね?』

「そうだよね。あ、ほら開きましたよ。入ってください」

藍染さんはいつもの藍染スマイルを出すと、タイミングよく門が開いた。

そしてそれと同時に…

ゴッズッダダダアン

何かが飛んできて平子真子を吹っ飛ばした。

『今日も…ナイスローリングですね』

「素晴らしいね、毎度毎度」

そう言う私と藍染さんの目の前で綺麗に着地をするひよ里。

「オッス!ハゲシンジ!!今日もペタンコで踏みやすいカオしとんなァ!!」

「ひよ里お前コラァ…」

「何やねん謝らへんぞ!!」

「まだ何も言うてへんやろ!!」

私たちの目の前でお約束のやり取りをするひよ里と平子隊長。するとひよ里の後ろから愛川隊長がやってきた。そして勢いよくひよ里の頭をグーで殴った。

私はその隙に平子隊長の元へ駆け寄った。

『また鼻血出して…』

「言っとくけど俺なんっも悪ないぞ!!ただの被害者や!!」

『そうですね。ですから今加害者は愛川隊長によって成敗されてますよ』

そう言いながら私は手を差し出した。その手を隊長はつかみ立ち上がった。すると平子隊長はひよ里に向かって全力で変顔をし始めた。

「あんな奴になァ!謝る必要なんかないねん!!見てみいあのカオ!!ハラたつわ〜!!!」

「わかったわかった」

「…隊長もやめて下さい。隊員達の前ではそんなカオしないで下さいよ?」

『私…もう見ちゃったんですけど』

「記憶から消した方がいいよ。君のためにも」

『…頑張ります』

こんなことがありながら、私たちは一番隊舎に足を踏み入れた。

「みんなもう揃ってんのか?」

「大体な」

「十一番隊が来てへんやんけ」

「あいつァサボリだ。相変わらず言うこと気かねぇみたいだぜ」

「何や十代目の“剣八”か知らんがナンギなやっちゃな」

十一番隊隊長か…ここに来て結構立つけどまだ見たことないな……確か名前は鬼巌城剣八?…何かめっちゃ強そうな名前だな。いや、実際に強いのか。…一回見てみたいな。

「桜チャン今会うてみたいって思たやろ。あかんで。あんなブタみたァな奴見たら目が腐るで」

ブタって…どんな奴だよ。

『ゴリラ見慣れてんで大丈夫だと思いますけど』

「勲サンはええねん。何であないな奴が隊長にしてんやろな」

「しょうがねえだろ。代々十一番隊隊長は“剣八”が務める。そういう仕来たりだ。誰かが悪いってんならあいつに負けた先代“剣八”が悪いのさ」

十一番隊は弱肉強食みたいだな…私五番隊で良かった。隊長に問題ありだけど。

“剣八”の話をしながら歩いていると、横から三人ほどの霊圧が近づいてきた。

「おやァ、他人の悪口は感心しないねえ」

「あれ、今日は早いね春水さん」

「何言ってんの。ボクはいつも一番乗りだよ」

「今日あたしがケツひっぱたいて起こしたんやっ!」

「他隊の隊長さんにタメ口きくのやめなさい」

「お、桜じゃないか。珍しいな」

『おはようごさいます浮竹さん』

向こうからやってきたのは京楽さん、リサさん、浮竹さんの三人。

「桜ちゃんは今日はお見送りかな?いいなぁ〜ボクも可愛い子にお見送りされたいな〜」

「いくら春水サンでもあげへんで」

「そうや。桜はあたしのモンや!」

『いや、それは違います』

私は誰のものにもなった覚えもありません。いつも言うけど。

「そういえば…曳舟が見えないな。今日はもう来ないのか?」

「ん、彼女はもうあっちに合流したみたい」

「忙しないな。急事でもないんだ。もっとゆっくりすればいいのに…」

「まったくだ」

曳舟隊長…なぁ。一回しか会ったことないや。なんか…こぉ…強烈な人だったな。いろんな意味で。

「しかしアレやなァ。この頃コロコロコロコロよう隊長代わりよんなァ…おととし三番隊長にローズが入ったばっかしやのに…次は十二番隊…こんなんでここ大丈夫なんかいな」

「まあまあ、何事にも代わり時ってのがあるもんだよ。今はうちがそういう時だってだけの話さ。実際百年以上隊長やってんのなんてボクと浮竹と山じいくらいじゃないの、ねぇ」

『え、卯ノ花隊長は違うんですか?前に山じいから聞いたんですけど』

「おおう!そうだった。大先輩忘れちゃ叱られちゃうよ怖い怖い」

そう言って京楽さんは苦笑いをした。

「でもまあ、三番隊は引退、十二番隊は昇進。十番隊みたく死んだ訳じゃないんだ。平和な事じゃないか」

「昇進!?」

いきなり藍染さんは声をあげた。

「あ、失礼しました。隊長達のお話に――」

「いんや構わないよ惣右介くん。何だい」

「副隊長は聞かされていないのですが…十二番隊の曳舟隊長は引退ではなく昇進されたのですか?」

「そうだよ」

「隊長位より上というと…四十六室ですか?隊長から昇進して四十六室になったという話は聞いた事が無いのですが…」

確かに…そんな話私も聞いたことない。そもそも隊長位がいきなり四十六室にはいるか…?

「四十六室じゃないよ。彼女が入ったのは…王属特務――零番隊さ」

「!!王属…特務……」

王属特務零番隊。この言葉を聞いたとき、藍染さんの目の色が変わったように見えた。だが次の瞬間にはもう元に戻っていた。

見間違いか…でも零番隊なんてあったんだ。それに王属特務……つまり王属がいるっつーこと…?

そんなことを考えていると式典が行われる部屋の扉が開いた。

ギィィィィ

「来たみたいだぜ、新入り。並んで待てってよジイさんが」

そう言いながら六車隊長が出てきた。その言葉に皆はぞろぞろと中へ入っていった。

「行ってくるわ。大人しゅーしとけよ」

そう言って平子隊長は中へ入ろうとした。私は咄嗟に隊長の羽織を掴んだ。

「ん?何や?」

『あの…王属特務って……』

「………」

私がそう言いかけると、平子隊長は私の頭の上に手をのせた。

ポンッ

「世の中には知らん方がええこともあるんや」

…つまり……この話には深く首を突っ込むなってことね…

『…分かりました』

「ん、聞き分けええな。そんじゃあ隊舎戻っとけな」

そう言うと平子隊長は私の頭から手を離し、部屋の中へ入ってった。
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