蜂蜜果蜜

□蜜二十滴
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「くらえっ!!」

「どこ投げとんねん!そんなん当たらんわ!!」

はい、寒いですね、元気ですね、仕事してほしいですね。

私の目の前に広がるのは一面の銀世界。誰の足跡もなく綺麗に降り積もった雪。…数分前までは。

今は足跡やら手で掴んだあとやらなんやら色々な跡がついてぐっちゃぐちゃ。副隊長と隊長が仕事中に雪合戦ってどーよ。

ボスッ

「ぶっ!!」

「当たった!見たか桜!?今真子の顔面に当たったで!!」

『おー…ナイスヒットー』

「コラァひよ里ィ!!」

喜ぶひよ里に対して顔をおさえながら起き上がる平子隊長。

これ、一応仕事中です。けっっっして、休日や休憩時間ではない。バリバリ仕事中だ。

なんかもう…自由万歳って感じだな。いい加減注意する気力もねーよ。藍染さんなんてさっきそこの廊下通ったとき見て見ぬふりしてったからね。ツッコミもしなかったからね。

『私もそーすりゃよかった…』

声かけた私がバカだった…一歩でも動こうとするとひよ里に止められる。

“まだ決着ついてへんぞ!!最後までみとけや!!”

…ってね。

すんません、帰っていっスかね。

「おまっ…固すぎんやろコレ!!どんだけ力込めてにぎってんや!!!!」

「渾身の力込めてんに決まってんやろ!!ハゲシンジ覚悟しろや!!!!」

「アホか!!そんなガッチガチの雪玉食らってたまるかっ!!桜チャン雪玉作ンの手伝ってくれや!!!!」

「あっ!ズルいぞ!!桜手伝わんでええからな!!」

『そもそも関わる気ィねーよ』

何もしないでいーなら帰らせてくれよ。仕事させてくれよ。藍染さんと愚痴りながら残業すんのもう嫌なんだよ。あんな暴言吐く藍染さん見んのは辛いんだよ。

そう思いながら私はボーッと雪合戦を眺める。そして目の前をものすごい勢いで飛んでいく雪玉。

『今日も…残業だな…』

そう呟いたとき、向こうから愛川隊長がやってきた。私に気がつくと愛川隊長はこっちに向かってきた。

「よォ桜ちゃん。こんなとこで何してんだ?」

『愛川隊長こんにちは。まぁ…あれが原因です』

そう言って私は目を外に移した。すると納得したような顔をした。

「何やってんだあいつら…」

『アレ一応護廷十三隊の隊長と副隊長ですよね……なのに仕事中に…チッ…』

「世も末だな」

『ですね』

そう言って二人で遠くを見つめた。お互い苦労していることが自然と伝わってきた。

「こんなクソ寒ィ中よく遊べんな。しかもあんな薄着でよォ。風邪ひいちまうぞ」

『言ってもきかないんですよあの二人。風邪引いたって知りませんよ』

「そうだな。まぁバカは風邪ひかねぇっつーしな。しばらくほっときゃあ飽きんだろ」

『飽きますかねぇ…かれこれ二十分近くやってんですけどね…あれ』

「二十分!?それじゃあ桜ちゃん…ずっとここに立って見てんのか?」

『その通りです』

そう言うと愛川隊長は私の肩に手をポンッとおいた。

「もう…帰っていいと思うぜ」

『そう思うんですけどね、一応私の隊長なんで連れ帰んないといけないんですよ。風邪引かれたら困りますし』

「確かに…これ見たら俺もひよ里連れ帰んねーとな。ったく…世話のかかる…」

『やるなら人に迷惑がかからないことやってほしいですね。…いや、無理か』

「無理だな」

そう言って二人で頷く。

もう…ホンットいい加減にしてほしいよね。どうしてこんなに手がかかるんだ。ある意味総悟よりタチわりーよ。

この二人はどうして…どうして会う度こうなんだよ。ひよ里がすぐ手ぇ出すのが悪いのか?それとも平子隊長が意地悪なこと言うのが悪いのか?

……どっちもどっちだな。二人とも大差ねーや。

「そーいやよ」

『はい?』

「桜ちゃんが五番隊に来てそろそろ二ヶ月くらい立つか?」

『もう二ヶ月は立ちましたね。もう少しで二ヶ月半ってとこですかね』

「お、もうそんなになるか。早ぇもんだなぁ」

『そうですねぇ。あっという間でした』

「色々あったもんなー。真子相手によくやってるよ桜ちゃん」

『あの人の相手は慣れました。そしてひよ里が平子隊長を蹴り飛ばしたくなる気持ちもよく分かりました』

「でもなァ、あいつ見た目と違って結構タフだからなぁ。なかなかしつこいだろ?」

『しつこいですね、かなり。何回潰してもすぐ復活してくんですよ』

「つ、潰す…たくましくなったな桜ちゃん…」

『元からこんなもんですよ』

「いや…最初の頃は手は出してなかったぞ。まだ我慢してた」

『…我慢は体に悪いんですよ』

「ストレスたまりまくってんもんな」

『最近じゃ胃がチクチクすんですよ…』

そう言ってお腹を撫でる私。その隣で“マジかよ…”と言いながら哀れんだ目で見てくる愛川隊長。

「胃薬…やろうか?」

『いえ、今のところは大丈夫です。これ以上平子隊長がバカやらなければ…』

「そうだなァ…せめて真子とひよ里のあれが無くなりゃいーんだけどなァ…」

『そうですねー…』

私たちは同時に盛大なため息をついた。その時、前方からなにかが飛んできた。

ボスボスッ!!

「がはっ!!」

『ぶっ!!』

私たちは勢いよくそれを食らった。そしてそれが冷たいことから雪玉だとすぐ分かった。

「ヤバッ…」

「どこ投げてんねんノーコン」

「真子も桜に当てたやろが!!」

…へぇ……隊長が私の顔面に…ねぇ…

私は黙ったままその場にしゃがみ雪を掴んだ。愛川隊長も同じようにした。

「『……………』」

「オイ…大丈夫か?桜?」

「羅武の心配もしたれ。当てたのお前やぞ」

二人はざっくざっくと雪を踏みながら私たちに近づいてくる。私と愛川隊長は下を向いたまま口を開いた。

『愛川隊長…』

「…なんだ」

『手…組みませんか?』

「あぁ…俺も今そう言おうと思ってたところ……っだ!!!!」

ボスッ!!

「うおっ!!」

『気が合います…ねっ!!!!』

ビュンッ…ボスッ!!!!

「ぶはっ!!」

私たちはほぼ同時に立ち上がり二人に向かって雪玉を投げた。

「ひよ里ィ…人に迷惑かけんのやめろっつったじゃねーかよ…あ?」

「いや…あのそのっ…」

『隊長…あんたに黙って付き合ってやってたのにこの仕打ち………一回地獄見ます?』

「ちょっ…待っ…桜…サン?」

「『今日という今日は許さねェェェェェ!!!!』」

「「ぎゃぁああぁあぁぁああぁあぁあ!!!!!!!!」」


その後、雪合戦は私と愛川隊長チームの圧倒的勝利で終わりましたとさ。

めでたしめでたし。














「桜サーン…もう許してくれてもえーんやないでしょうか……」

『駄目です。あと一時間はそこで正座しててください』

「月ノ瀬君…流石に夜の廊下は冷えるよ…?」

『バカの頭冷やすには調度いいです』
 

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