蜂蜜果蜜

□蜜十滴
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ダッダッダッダッダッダッ!!

「ちょっと待ってください!!」

「話だけでも!!!!」

『だから嫌ですって』

只今私は全力で早歩きをしています。

ダッダッダッダッダッダ!!

「何でですか!!」

「お願いしますよ月ノ瀬さん!!」

『嫌です。つーか追いかけてこないでもらえます?もうそろそろ女子寮入るんですけど』

ダダダダダダダダダダダダダッ!!!!

『あとソレ、止血しないと死にますよ。貴方達が今すぐに黙ってくれるなら万々歳ですけど』

「ひどっ!!つーか歩くのはやっ!!!!ちょっ!待ってくださいって!!」

「部屋に戻る前に少しだけでもお話を!!!!」

『だから却下だっつってんだろ』

五番隊にはしつこい奴しかいねーのかよ。それもこれも隊長があんなやつだから悪いんだろーな。

そう思った私は歩くペースを上げた。もう早歩きと言うより小走りになってきた。

その時、どこからともなく奴が出てきた。

「ドタドタうるさいぞーコラ」

『げっ』

「「ひっ!平子隊長!!!!」」

「ゲッて何やねん」

そんままの意味だっつーの。

私と隊士は足を止めた。どうやら平子隊長は縁側でお月見をしていたらしい。

お気楽そうで何よりですコノヤロー。

「桜チャン追いかけて何してんのや?あんまいじめたらアカンでェー」

『あんたが言うか』

「しゃーから俺のは可愛がってんや。何べんも言わすなァ」

『それ私の台詞です』

このいつも通りのやり取りを繰り広げる私達を目を丸くして見る隊士たち。そしてハッと我にかえる二人。

「あ、あの!!隊士!!」

「ひとつお聞きしたいことが…!!」

「何やー。はよ桜チャンで遊びたいから手短に頼むわ」

私で遊びたいからってなんだ。別にそーゆー趣味はねーよ。遊びたいなら一人でやれ。

そう思った私はこの場を即刻去ることにした。

『じゃ、私はこれで。お疲れ様でした』

「「待ってください!!!!!!」」

グイッ!!

『おわっ!!』

ズダーンッ

私は二人におもいっきり引っ張られ、その勢いで顔面から床へ突っ込んだ。

か…顔が…潰れる………

「何しとんのやお前ら。母ちゃんに女の子は丁寧に扱えて教わらなかったんか」

そう言って倒れた私を起き上がらせる隊長。

『…コロス』

「落ち着け。そない物騒な言葉遣うな。ホレ、なでなでしたるから機嫌なおし」

『触んなハゲ』

「ひよ里の口癖うつっとるで。ええからなでなでさせろや」

『セクハラで訴えますよ』

頭を撫でようと手を構えていた平子隊長を避け、私は顔を押さえながら立ち上がった。

「あ、…あの!!その…すみません…!」

「大丈夫ですか…?」

『顔面強打して平気なやつはいないと思いますけど』

「そらそーや」

「申し訳ない!!でもどうしてもお話を伺いたくて…」

『そんなの知りません。聞きたいことがあるならそこの暇そうな隊長殿にどうぞ』

「誰が暇そうやねん。ええやんか別に。業務時間おわってんやから」

『なら尚更暇ですよね。良かったですねーやさしー隊長がお話を聞いてくれるそうですよー』

そう言って私は女子寮の方へ足を進めた。後ろで二人の隊士の呼び止める声がするが、聞かないフリ聞かないフリ。

そして私は背を向けたまま喋った。

『それじゃーお先です』

「ままままってくださいっ!!!!」

「月ノ瀬さんっ!!」

「あ、オイお前ら」

思った通り二人は私のあとを追いかけてきた。私はそのまま真っ直ぐ歩いて、ある地点まで来ると私は後ろを来るっと振り返った。

『はい、入った』

「「え?」」

「アホやな」

私はニヤッと笑って、そして大きく息を吸った。

『五番隊女性隊士のみなさァァァァん!!こォーんな夜遅くに男が入り込もうとしてますよォォォ!!この!男子禁制の場にィィィィッ!!!!』

「「え……ええっ!?」」

「月ノ瀬さん何てことを!!!!」

『少し黙ってください』

慌てふためく隊士たちに、私は人差し指をたてて唇に当てた。隊士たちも同じように困惑した顔で黙っていると、遠くからドタドタドタと足音が近づいてきた。

ドタドタドタドタドタドタドタッ!!!!!!!!

そして足音の主というのは…

「「「「「なんですってエエエエエエエエエエエ!!!!」」」」」

鬼の形相をした五番隊のお姉様方だ。

「「ウッソオオオオオオオオ!?」」

「こんな夜中に何しに来たのよ!!!!」

「出ていきなさいよ!!」

「そうよ!!!!早くでてけーっ!!」

「ちょっと桜ちゃんじゃない!!!!どうしたのこんなところで!?」

「あんた達もしかして桜ちゃんに手ぇ出したんじゃないんでしょうねっ!?大丈夫?桜ちゃん!?」

『襲われそうになりましたー(棒読み)』

「ふざけんじゃないわよ!!!!あんた等桜ちゃんに手ぇ出してただですむと思ってんの!?」

「叩きのめしてやる!!待ちなさいっ!!!!」

「「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!」」

「「「「「待ちなさァァァァいっっっ!!」」」」」

お姉様方はそのまま逃げた隊士二人をダッシュで追いかけていった。私はその様子をザマァみろといった表情で見送った。そして私は縁側に座っている隊長に向かって挨拶をした。

『それでは、お休みなさい隊長』

「酷いやっちゃなァー」

『それが私です。隊長も早く部屋に戻った方がいいですよ。最近冷えますし』

「そーやなー。桜チャンが湯タンポ代わりになってくれたら俺も大助かりなんやけ『おやすみなさーい』せめて最後まで聞きけや」



















―――第三者目線―――

ゼィハァ…ゼィハァ…ハァハァッ…

「おう。早かったな」

「こっ…怖かった……」

「死ぬかと思った…」

先程の女性隊士から追いかけられてた隊士二人は息を切らせながら戻ってきた。それを平子は興味なさそうな顔で見る。

「桜チャン人気やから余計にやろ。それにここの女の子は怖いからなァ」

「俺、トラウマにやりそうです…」

「僕もです……」

「まぁ、しつこくしたお前らの自業自得やろな。そんで、そこまでして聞きたかったことて何なんや?」

平子がそう聞くと、本当の目的を思い出したように隊士たちは目を生き返らせた。

「それがなんですが…」

「彼女は…月ノ瀬桜は何者ですか?」

「何者て。お前らが知っとる通り五番隊の新人隊士やんけ。聞きたかったことってそんな事か?」

「いえ!違います!!彼女が新人隊士と言うことは知っていますが………なぁ?」

「あぁ……」

一人の隊士がもう一人の隊士に同意を求めるようにたずねる。それをみた平子は頭の上にクエスチョンマークを浮かべる。

そして隊士たちは顔を見合わせて恐る恐る言葉にした。

「隊長も知っての通り、先程虚討伐の命が下り僕とこいつと他の隊士3人と…それから月ノ瀬さんとで行ってきたのですが…」

「それがかなり強い虚でして俺らは苦戦していたんです。怪我人も出たのですが……」

「それはさっき報告来たで。えらい大変やったみたいやな。でも倒したんやろ?」

「はい…倒したは倒したのですが…………」

そこまで言い、口ごもる。それを見かねたもう一人の隊士が口を開いた。

「…月ノ瀬さんが…お一人で倒されたのです!!!!」

「それも圧倒的な強さで!!!!」

「ほォ〜…桜チャンがなァ」

平子は隊士たちの言葉に面白そうに返した。

「あの腕前は新人とは思えません!!!!彼女は一体何者なんですか!?」

「僕ら合わせて五人がかりでも怪我人が出たんですよ!?ただ者とは思えません!!隊長も彼女の戦い見たことありますよね!?」

「いーや、俺はないで。桜チャンが五番隊に来てから今日まで虚討伐行かせたことないからなァ。アイツ稽古とかしーひんし。それに俺の知る限りではただ書類整理が得意な新人隊士やぞ」

「そ、そうですか……でもっ!!」

隊士は納得いかないといった表情で顔をあげた。

「あの人の戦い方は尋常じゃありませんっ!!なんか…こう…野性的と言うか…」

「剣の扱いはデタラメなのにどういう訳か物凄い強いんです!!!!何故十一番隊にいないのか不思議なくらいです!!!!」

「(野性的とか言われとるで桜チャン)桜チャンおてんばさんやからなァ〜怒らすと怖いしなァ〜」

「そんな可愛い感じじゃないんですって!!」

「もっと真面目に聞いてくださいよ隊長!!!!」

「そんな喚かんでもちゃんと聞いとるわ。もォーよう分かったから今日は部屋戻れ。お前らボロボロやぞ」

「いやでも!!!!」

「えーから戻れ。言いたいことはよー分かったから」

平子がそう言うと、隊士たちはしばらく納得いかないと顔をしたあと諦めて自分の部屋へ戻った。

平子は隊士達が行ったのを確認すると、縁側に腰を掛けたまま空を見上げた。

「どんな戦い方したらあんな言われんや?」

呆れたようにボソッとそう呟いた平子。だが、それはすぐ変わった。

平子は嬉しそうな顔をして桜の部屋がある方向を見つめた。

「でもまァ…そろそろ知りたいと思てたところや。なァ…桜チャン?」
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