蜂蜜果蜜

□蜜六滴
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「これなぁ〜んだ!」

私の目の前で地面に描かれた絵を指差すのは、九番隊副隊長久南白。

そしてここは五番隊舎の庭。

『……謎の物体』

「はっずれー!さくらんまた間違った!!」

『これ、画力の問題でしょ』

つーか一個前に描いた絵と何が違うの?私には糸屑のまとまりにしか見えないんだけど。

『ちなみにそれは?』

「見ての通りおはぎだよ!それでコレがきなこ!」

『分かるかよ…もうちょい分かりやすいのにしてよ』

「しょうがないなあ。じゃあさくらんのためにもう少し簡単にしたげる」

そう言って白は、棒切れを地面につけて絵を描き始めた。そして描き終わったのか、白は顔をあげた。

「これはー?」

『えーっと……』

地面に描かれた絵はこうだった。

どうやら今度は人らしい。しかもかなりムキムキの。そして目はかっぴらいていて…うん、怖い。こんな化け物みたいな人見たことねーよ。

ん?でもこれどっかで……………あ。

『もしかして六車隊長?』

「せーかーい!!やっと当たったね!」

『嬉しいけど…』

六車隊長にバレたら殺されそう。ごめんなさい、ごめんなさい六車隊長。あなたのチャームポイントの筋肉がつい目に入ってしまって。それからお腹の卑猥っぽい69って数字が目に入ってしまって。あと怒ったときの六車隊長の目にそっくりだったから。クリソツだったから。

私は両手を胸の前で合わせて空に向かって拝んでおいた。

拝んどきゃ最悪でも死ぬことはないだろう。……と、そう勝手に解釈しておこう。

「何やってるのさくらん?なんかバカっぽいよー?」

『バカでもいいから六車隊長に殺されたくないの』

「さくらん拳西怖いんだあー!ダッサーイ!!」

『そんなこと言えんのあんたぐらいだよ。もう尊敬するわ』

そう言うと面白そうにケタケタ笑う白。

白ってさ、神経図太いよね。私が言うのもなんだけど図太いよね。こんな性格で六車隊長と仲良いとかさ、もう奇跡に等しいと思うよ。そして白相手に毎日拳を押さえ込んでる六車隊長は素晴らしいと思う。

「じゃあこれはなーんだ!」

私が六車隊長の素晴らしさについて考えていると、白が次の絵を描き始めた。

「ヒントはねえ〜…ない!」

『無いなら最初から言うな』

「いいじゃん別に〜。ホイ!出来た!!」

『はいはい……えーっと…………っブハッ!!なっ…何これ!』

私は勢いよく吹き出した。

だって!!めっちゃ目付きの悪い歪なツインテールの女の子がキバはやして暴れてんだもん!!

「だーれだ!!」

『誰って…ぷっ…ひ、ひよ里でしょ…?』

「だいせいかーい!!うまぁーくかけたでしょ〜」

私が必死に笑いをこらえているのにも関わらず、白は自慢気にそう聞いてきた。

『これはうまい。マジでうまい。めっちゃ分かりやすい。短時間で上達したね白』

「だしょだしょ〜?じゃあ次はさくらんの番ね〜!」

そう言って棒切れを私に渡してきた。

「え、私?…うーん……」

あ!あれなら描けるかも…

私は描く絵を頭に思い浮かべながら棒をスラスラと動かした。

『はい、これなんだ』

私がそう言うと白は、はいっと手をあげて答えた。

「らぶっち!!」

『正確。つーか即答って』

白が即答出きるほど分かりやすくかいた絵とは…、

まぁ、あれだ。わたにグラサンかけただけだ。

え?いじめじゃないよ?できるだーけ分かりやすく描いてあげようと思ってね。別に意地悪でもないからね。そーですからね愛川隊長?

「それじゃあー次の問題いってみよ〜!」

テンションが上がってきたようで白はノリノリだ。

実はちょっと私もノッてきてる。次は何を描こうか。

あ、…奴を描こう。

私は途中途中迷いながら棒を動かした。

カキカキ…カキカキφ(..)

「わかった!!真子だ!!」

『はやっ』

白は愛川隊長の時よりも早く答えた。

『まだ体かいてないのに』

「だってえ〜、この長髪パッツンと、アホみたいな目と、この気持ち悪い口は真子以外にいないも〜ん」

『…ですよねー』

そしてジーっと平子隊長の絵を見て、二人で顔を見合わせて大笑いした。

「真子不細工ー!きもちわる〜いっ!!」

『アッハハハハハ!!変っ!!いつも以上に変っ!!』

「えいっ!」

『あ、』

「眉毛太くしちゃえ!!」

『ちょっ…それ以上やったら…』

ガリガリガリ…

「できた!!」

『〜っ!!ハハハッ!!やっ、ヤバイ!!キモい!!アッハハハハハ!!っヒィっひヒィーっ!!くっ!苦しい!!』

腹筋崩壊する!!!!

「鼻毛もかく?」

『マジでッ…?』

そして白はリズムよく平子隊長に鼻毛を描き足した。もちろんそれはそれは不細工なわけで、

「『ギャハハハハハハハハハハッ!!!!!!』」

私と白は腹を押さえながら転げ回った。

「お腹っ!!お腹いたいよー!」

『はっ…腹がよじれる…!!』

地面に這いつくばった状態でお腹を押さえて笑いをこらえようとしていると、誰かの霊圧の気配がした。

そう気づいたときにはもう遅くて、

「何してんねん」

平子隊長が不思議な顔をして立っていた。

「あー!しんずぃ〜これ見てコレ!!」

「ん?何や?」

『………………』

…ヤバ。

白に言われるまま平子隊長はしゃがんで下をのぞき込むように地面を見始めた。私はバレないうちに静かに一歩一歩後ろに下がっていく。

バレませんようにバレませんように…どうかバレませんように…。

私は念を送りながらジリジリと後ろに下がっていく。その時白が大きな声でこう言った。

「コレが拳西でね〜コレがらぶっちで!それでコレが真子ー!」

白さんのバカーッ!!

平子隊長はニヤッと笑いながら手を顎に当てて“へぇーほぉー…”と、言っている。

「この眉毛が太くて鼻毛がはえてる奴が俺かー…なるほどなァー。よーかけとるわー」

や…ヤヴァ〜イ…

私はもう静かに逃げるのをやめて、瞬歩を使おうと平子隊長と白に背を向けたとき、

「真子はねーさくらんが描いたんだよー」

「そーかそーか。桜チャンこっち来ィー」

『……あの、私そろそろ仕事に戻らなくちゃ…』

「そーやなァー。そろそろ休憩時間終いやもんなー。白ははよ九番隊に帰り。拳西探しとったで」

「えぇー!まださくらんと遊びたい〜ぶーぶー!」

おっ!白ナイス!!

白はお約束の通り駄々をこねはじめた。私はこの隙に逃げようと思ったその時、平子隊長はいつも以上に口角をあげてこう言った。

「あかんでーそりゃ。桜チャンはこれからお仕置きの時間やからなァ」

『……え』

「えーっ!さくらんだけずるい〜っ!白も〜!!」

そっ…その調子だ白!!

私が冷や汗を流していると白は地面に寝っ転がり手足をバタバタさせ始めた。

「白にはすこーし早いお仕置きやから駄目や。分かったらとっとと戻りー」

『ま、白。そこまでおくってくよ。ね?』

ねっ!?だからイエスと言いなさい!!

私が心の中でそう願っていると間に平子隊長が入ってきた。

「そらあかんでー。悪い子にはお仕置きや。別に大丈夫やで?やさしーくしてやるから」

『え、いや…あの……そのー…それはできれば遠慮したいなー……なーんて……』

「上司の顔描いて落書きするとはええ根性しとるやんけ。どーやら躾が足りひんかったみたァやなー」

『ですからその…これには理由が……ね?白?そうだよね?って…いない!!!!』

さっきまで白が寝っ転がっていた場所を見るとそこには誰もいなかった。どうやら帰ったらしい。

裏切り者!!!!あんたが私の描いた平子隊長に落書きしたんだろーがっ!!!!

「ほんなら隊首室行くでー」

平子隊長は、私が胸の前で隊長を拒否るように手を出していると、その手首をつかまれた。

『何で隊首室なんですか』

「ん?何や、知りたいんか?」

『……やっぱいいです』

「それはなァー。あーんなことやこーんなとこするため『言わんでいい!!』

パッ

そう言って私は隊長の手を振り払った。そして隊長から距離をとった。

「そんな怯えんでもええで。めっちゃ可愛がったるでー桜チャン?」

『い…イヤです…』

顔が笑ってない顔が笑ってない!ただ黒い笑みを発してるだけ!!!!つーか可愛がるって…何をする気だ!!

「あーソレ。この前教えたやん。“イヤ”じゃなくて“ハイ”やろが。隊長に言われたことは全てハイで答えなアカンで」

『偉大なる隊長ならこんな危ない発言はしません』

「しゃーから…」

平子隊長はため息をつくと瞬歩で私の目の前まで来て私を担ぎ上げた。

グッ!!

『わっ!!ちょっ…え!?』

「返事はハイやろ?」

『この状況で言えるか!!離して!!』

「だーめや。ちゃんとお仕置きせな」

『いィィィやァァァだああああああああああああああああああ!!!!!!』


天気のいいお昼、五番隊舎には謎の悲鳴が響き渡ったそうだ。

そして数時間後の隊首室では雷吼炮が炸裂したそうだ。

その理由は黒こげになった平子隊長とマジギレした私しか知らない。
 

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