黒猫。
□黒猫が四匹
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臨「似合ってるよ」
『あっそーですか』
私は今とても不機嫌だ。ここに来てから一番不機嫌だ。その理由は…
臨「やっぱり桜は黒が似合うね」
『………チッ』
私が不機嫌な理由
@今朝届いた荷物がほぼ黒だったこと
Aスリッパや服がほぼ猫の模様入りだったこと
Bそれを無理矢理着せられたこと
Cそして一番の理由は…
『まだ8時なんですけど』
臨「もう8時の間違いじゃない?大体桜は夜更かしし過ぎなんだよ」
『あんたも人のこと言えねーだろーが』
大体なんなの?人が気持ちよく寝てるって言うのにベッドから突き落としやがって。それで一言目が“おはよう”?ふざけんなよコラ。
臨「俺はちゃんと起きてるからいいんだよ」
『うっせバーカ』
臨「ねぇ…いい加減に機嫌なおしてよ」
『ヤダ』
臨「意外と子供っぽいところあったんだね」
『オヤジからしたらそーだろーね』
臨「俺も人間だから傷つくことだってあるんだよ?」
『ならズタズタになればいい』
私はソファーに体操座りをしながら珈琲を飲む。臨也さんはその様子をパソコンの椅子から見ている。
臨「あのさ、俺は別にいいんだけど、体操座りしてるとパンツ丸見えだよ」
『これ買ってきたの臨也さんじゃないですか。それと臨也さんの見ている角度からじゃ見えないんで大丈夫です』
私はそう言いながらめ●ましテレビをぼーっとみる。
因みに私が今着ている服は、猫の模様が入った黒いTシャツに薄ピンクのミニスカートに黒のニーハイ。そして黒い猫耳つきパーカー。
笑顔でこれを持ってきた臨也さんに私が放った一言。
“キモい”
これ絶対あんたの趣味でしょ。ほぼ黒一色。しかもこんなミニスカ普段はかないし。つーかこれを一人で買いにいったのか。もう変人だな。
私は珈琲をすすりながら今朝の出来事を思い出していた。そして珈琲をテーブルにおいて少し斜めを見た。
『臨也さん』
臨「何だい?」
『何で前のめりになってんですか?』
臨「いやね?桜があの角度からは見えないって言うから、じゃあこの角度からはどうかなって思ってね」
『失せろ変態』
ドカッ
私はソファーに座りながら臨也さんの顔面に向けて足を伸ばした。そして見事にクリーンヒット。
臨「まさか…足が出てくるとは思わなかったよ」
『痛かったなら痛かったって正直に言ってください。笑顔が怖いです』
臨「痛かったよ。でもそのおかげでチラッと見えたから『眼球に熱々の珈琲でも注ぎましょうか?』遠慮しておく」
臨也さんはそう言いながら大人しくパソコンへ戻って、またキーボードをカタカタと手際よく打つ。
私はボーッとその様子を見ていると、キッチンからチンッと音がした。トーストが焼けた音だ。
私はソファーから立ち上がりキッチンへ向かった。そしてトースターからトーストを取り出して口に加えた。
臨「バターなら冷蔵庫の一番上だよ」
『塗るの面倒だからいいです』
臨「あっそう」
私はむしゃむしゃとトーストを食べながらソファーへ戻る。
トーストうまいけど…やっぱバター塗った方が美味しいな。塗ろうかな…あ、でもイチゴジャムの方がいいな。
臨「イチゴジャムもあるよ」
『でた。エスパー折原』
臨「なにその名前。イチゴジャムは昨日買ってきたんだよ。桜はバター派よりジャム派だと思ったから」
『私のこと分かりすぎてて薄気味悪いです』
臨「残念ながらそれが俺だ」
『知ってます』
なんだか…この人になれてきた自分が怖い。
そう思いながら私は最後の一口を食べる。するとその時、
ピンポーン
あ、誰か来た。
臨也さんの方を見ると少し忙しそうだった。
『出ましょうか?』
臨「いや、いいよ。もう終わったから」
そう言って臨也さんは立ち上がり玄関へ向かった。
私は…行かなくていいよね。知らない人だろうし。つーかここに知り合い一人もいないし。
そう思った私は飲み終わった珈琲を片付けようとキッチンへ行こうとした。その時リビングのドアが開いた。
私はドアの開く音に反射的に後ろを振り向いた。するとそこには臨也さんと…
新「やぁ、こんにちは」
白衣を着た眼鏡のお兄さんと、
《こんにちは》
ナイスバディなライダースーツのお姉さんがいた。
♂♀
新「つまり話をまとめると、僕は臨也の友達で昨日君の話を聞いて会いに来たってことだよ、ね?セルティ」
《私に話をふるな》
新「冷たいなセルティは…セルティが一番彼女に会いたがってたのに」
《うるさいぞ》
『…………………』
なんか……キャラが濃いよ。とても濃いよ。臨也さんの友達だから?てゆーか臨也さん友達いたんだ。こんな人にも友達いたんだ。
臨「今失礼なこと考えてたね?」
『いや…別に』
エスパー折原は今も健在だ。
臨「言っとくけどエスパーじゃないから。エスパー折原でもないからね」
『もう黙って』
新「あのさ、そろそろ本題に入ってもいいかな?」
本題……?
『臨也さん、説明してください』
臨「説明?俺はただ相談しにいっただけだよ。君のことをね」
『私のこと?』
臨「昨日言っただろ?明日結論が出るって。その事だよ」
私は臨也さんの言った言葉がよく分からず、頭の上にクエスチョンマークを浮かべた。
そんな私を見て臨也は口を再び開いた。
臨「まず…」
臨「桜はこの世に存在しない人間だ」