真撰組物語

□床屋でかわされる店員との会話は世界で一番どうでもいい
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【 床屋で交わされる店員との会話は世界で一番どうでもいい】


「チョンマゲって何であんな頭の毛剃るようになったか知ってるか?」

「頭に吹き出モノでもできたんじゃねーの」

『 地味にありそう』

「ありゃあな兜をかぶる時にムレないためよ。つまりいつでも戦にいけるという侍の気構えを表してるワケ。いわば髷は侍の魂なわけだよ」

『なーる。つまり銀さんはんなボッサボサの頭して仕事行く気構えがないから負け戦続いてんだ』

「そうそう、そーゆーことよ。それが今はどうだ。どいつもこいつも髷と共に魂を投げ捨て、やれパーマを当ててくれだやれ髪を染めてくれだ嘆かわしいことだよ。侍の国がきいて呆れると思わねーかい。嘆かわしいねェ。そうだろう。…で、今日はどうする?「ストレートパーマで」……」

親父の長々とした髷押しの話は銀さんには通用しなかった。

「親父しつけーんだよ。そんな話何度されたって俺は髷なんて結わねェストレートパーマで」

「旦那しつこいんだよ。アンタの頭はそんなんじゃ治んないの。性格のねじれが毛根から出てんだから。髷にしな、中身から叩き直しな」

『なにさ親父。床屋やってっと人の歪んだ部分まで見極めてカット出来んの?すごくねそれ。銀さんやってもらいなよ。今日で負け戦終わるかもよ』

「あのさぁ桜ちゃん?ツッコまなかったけどなんでここにいんの?ここ床屋よ?バーバーよ?男の子の聖域よ?女が軽々と踏み込んでいい領域じゃねーのよ分かる?思春期の中坊の部屋にノックもしないで勝手にズカズカ入り込んでくるお母さんといい勝負だからね君」

『ならちゃん鍵かけとけ馬鹿野郎』

何でもかんでもお母さんの所為にしてんじゃねーぞコラ。

私はそう言いながら手にしている漫画のページを一枚捲った。

『いーから髷にしてもらえよ。またあの頃のように魂が煌めくかもよ』

「いい加減にしろよ。髷が侍の魂?魂が煌めく?あんなもんハゲ散らかったオっさん達のただの言い訳だろーが。"これはハゲじゃありませーん、兜かぶるためなんですぅ"?兜の前にヅラをかぶれバカヤロー。魂煌めく前に頭煌めいてんだよ」

『うまいこと言ってんじゃねーよ』

「そういう優しさも孕んだ風習でもあるわけだよ髷は。みんなでハゲればハゲがハゲじゃなくなる、みんなでハゲて一つになろうという…」

「何それ、人類補完計画?」

『つーかもうどうでもいいからそのモッサイ頭早く切ってもらえよ』

そう言って私はまたページを一枚捲った。すると隣で私と同じように漫画を読んでいた神楽ちゃんがクルッと後ろを振り返った。

「終わったアルか銀ちゃん…アラ?ちょっと何ソレ全然スッキリしてないじゃないの。そんなんじゃまたスグ切りに来なきゃダメでしょ、もっと短く刈り込んでもらいな。マスタースポーツ刈りにしてください」

「お母さん!?」

『まぁまぁいいじゃないか母さん。髪型くらいノブオの好きにさせてやっても』

「お父さん!?」

「パンチパーマでも可アル。できるだけ時間かかる奴ネ」

そう言った神楽ちゃんの目の前にはゴルゴ17がどっさりあった。そして私の目の前には帯ギュッがどっさり。帯ギュッが分からない人はお父さんかお母さんに聞いてみようね。

「何完全読破しようとしてんの!?帰れバカここは満喫じゃねーんだよ!!つーか読むならせめてジャンプにしろや!」


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