真撰組物語

□タバコは一箱に一、二本馬糞みたいな匂いのするやつが入ってる
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【タバコは一箱に一、二本馬糞みたいな匂いのする奴が入ってる】


『賛成十人反対一人。土方さん以外全員賛成という結果になったのでこの議案は可決されました。…ってことで真選組屯所は今日から全域にわたり“禁煙”にします。お疲れさまです土方さん』

土「オ…オイ。全域はやり過ぎだろ。まるで喫煙者を締め出さんばかりの勢いじゃねーか」

『いや…私はただ議長に呼ばれただけですから知りませんよ』

今日は隊長格の会議。お題はこの通り屯所を禁煙にするかどうか。そして勿論この議題を出したのは…

土「せめて喫煙所を設けるぐらい配慮があっても…」

ピッ…グシ

沖「もう決まったことなんで」

たった今土方さんの口からタバコを取り捨てた男、サドスティック星の王子こと沖田総悟。

『…それじゃー解散です』

そう言うとわらわらとこの場をあとにするみんな。

「いや〜沖田さんの議題にしては久し振りに有意義な会議になったな」

「ああ。喫煙者なんつってももう副長位しかいなかったしな」

「けっこう煙たくて迷惑してたんだよ」

「やっぱ武道をたしなむ者としてタバコはイカンでしょタバコは」

「年頃の娘もいるわけだしさ〜体に悪いっしょ」

土「………………」

近「…………」

トン

近藤さんは苦笑いをしながら無言で土方さんの肩に手をおいた。

『ご愁傷さまです』













土「あのやろう…ふざけやがって。俺を本気で真選組から締め出すつもりか」

『あの顔は絶対楽しんでましたね』

土「クソッ所詮無駄だろうが外回りで出来るだけニコチン摂取しておこう。つか何でお前がいんだよ」

そう言いながら自販機でタバコを買う土方さん。

あなたがさっさとニコチン摂取しないと仕事が進まなくて、その進まなかった仕事が私にまわってくるからだよコノヤロー。……とは言えないので、

『…ズルズ龍が見たいからです』

土「ずるず?え?何?」

『その内わかります』

そう言うと納得してないような顔で買ったばかりのタバコをあけ、口にくわえた。するとその瞬間行き交う人が土方さんをチラチラ見はじめた。

土「………?」

『土方さんアレアレ』

私は“路上喫煙禁止”と書いてある標識を指差した。

土「…どっかファミレス入るぞ」

『え、でも「いいから行くぞ」言葉かぶってるんですけど』

ダメだ。朝のあれっきりニコチン摂取できてないからかなりイライラしてる。

そんなイライラ増幅中の土方さんと近くのファミレスに入る。

『あのー土方さーん』

土「なんだ灰皿ねーじゃねーか……すいません灰皿あります?」

「申し訳ありません。当店は全席禁煙となっておりまして」

土「…………」

だから人の話聞けって。

土方さんは無言で立ち上がり出口へ向かった。

『…だいぶキテるな』

私はため息をつきながら土方さんのあとを追った。

いや、もう帰ってもいいんだろうけどね。ここまで来たら土方さんどこまでもノンストップだろうし。だけどさ、最終的にボロボロになる土方さんを見たいんだよね、この目で。そんで『ざまぁーみやがれ』とか言いたいんだよ。

つまり、土方さんで遊びたいです。

こんなチャンス滅多にない。最近散々人のことをコキ使う上司に自分の手を汚さず仕返しをするいい機会だ。

『……しっかし、どこもかしこも禁煙状態だなぁ』

私は早歩きで進む土方さんの後ろを歩きながら町をみる。店の窓には禁煙と書いた貼り紙が貼ってあり、看板や標識にも禁煙とそこら中に書いてある。

『っと……土方さんどこ行った?』

町の様子に気をとられていると土方さんを見失った。

私は駆け足でこの辺りをキョロキョロと探した。すると公園で町内会のおばさんにめっちゃ怒られてる土方さんを見つけた。そして土方さんはおばさんから解放されるとトイレへ向かった。

一分とたたない内に出てきたが。びしょ濡れで。

ガンッガンガンガンッガン!!

土「ケッ…ケ…ケ…ケムリを吸わせろォォォォォォ!!」

『怖い怖い怖い怖い』

どうやら土方さんはニコチン切れで頭がイカれたのか、自分の頭を電信柱に血が出るほどに叩きつけていた。

いや、ぶっちゃけコレ見たかったけどさ。指差して笑いたかったけどさ。身内に近い人間からして見るとあれ、シャレにならないわ。

土「どうなってんだどこもかしこも禁煙禁煙って。いつの間にか禁煙者の居場所はどこにも無くなってるじゃねーか」

『総悟の思い通りですね』

土「あのヤロー……吸うなと言われると余計に吸いたくなる。もうダメだ、もう限界だ。このままでは俺は…俺は…」

『え?もうダメですか?限界ですか?死ぬんですか?死にますか?死なせましょうか?いっそ死にましょう』

土「うるっせーよ!!何なんだよお前!何でそんな生き生きしてんだよ!!つーか最後の疑問系じゃなかったよな!?」

『はい』

土「少しは否定しろォォ!?」

『じゃあ否定します』

土「じゃあってなんだよじゃあって!!何だよそのしゃーねぇなァみてーな感じは!!」

『じゃーどーしてほしーんだよ』

お前が否定しろっつったから否定したんじゃんかよ。なのに何で私がおもくそツッコまれてんですかー。先生ェ理解できませーん。

とても理不尽だと思います。なので先生、私はちょっと土方君に嫌がらせをしようと思います。

私は隣で目が死んでいるもとい目が血走っている土方さんの肩をトントンと叩き、遠くに小さく見える喫煙所を指差した。

『土方さん、アレ。アレ見てくださいアレ』

土「アレアレうっせーよ……っあ…あれは!!」

土方さんは喫煙所を見つけるとマッハでそこへ向かって走っていった。もちろん私はついていかない。

爆発に巻き込まれるのは御免だ。灰と共にチリとなって消えな土方。

私が遠くから土方さんが煙草に火をつけるのを見守っていると、

ドォォォンッ!!!!

爆発した。

ここでSになるためのポイントひとつ。

血だらけになって無様に地べたに転がっている哀れな土方さんの写真を納めておこう。全体をとった写真を一枚と顔がよく見えるようにアップで撮ったら写真を一枚。

そしてここでもう一つポイント。

これを総悟へ送りつけよう。一瞬にして屯所中に広まる。そして明日には江戸中に広まることだろう。

でもそろそろ可哀想だからここら辺にしてあげようかな。

私は爆発に巻き込まれてボロボロになった土方さんの前にしゃがみこみ、ポケットからあるチケットを二枚取り出した。

『そんじゃー行きますか』
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