真撰組物語
□便器を磨く事これ心を磨く事なり
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場所は変わって厠。男子トイレに私がいるということはスルーの方向で。
清「センサー式の手洗いは導入決定。しかし問題はまだ山積みです。見てくださいこの床を」
そう言って便器近くの床に目を向ける清蔵。
清「先程、掃除したのにもうこの始末です。多少の飛沫ならまだしもこれは完全に的をはずしています」
土「改めて見るとひでーな」
『改めて見るとって……改めて見なくても酷いですよ。最悪ですよ。どんだけ的外してんだよって話ですよ』
清「恐らく連れションによる影響でしょう。複数で厠に入り談笑するうちに下がおろそかになりあらぬ方向に小便が飛んでいるのでしょう」
今どき男も連れションかよ…侍が聞いてあきれるな。
清「まず連れション禁止令を布くことが第一。局中法度に加えておく。しかしたとえ一人でもまだ心配はぬぐえません」
土「!!そうだ。便器に予め汚れをつけておくというのはどうだ?洋式便所で小便をするときのことを考えてみろ」
考える前に私女なんですけど。そーゆー経験ないんですけど。
土「便器に汚れがついていると無意識のうちに小便で汚れを狙い撃ちし汚れを落とそうとしている時があるだろう。あの心理を利用して便器に狙いを集中させるようにするんだ」
沖「土方さん。さり気に自分の恥ずかしいクセを暴露してるんですか」
『いっつもそんなことやってるんですか?男ってそんなことしてるんだへぇー。総悟もやってたりするの?』
沖「まさか。俺がそんなアホ事するわけねーだろ」
『んじゃー…土方さんは…』
土「……いや俺はやってないぞ。なんかそんな話をどっかできいたっつーか」
沖「いや、しかしいいアイディアだと思いますよ」
オイ、さっきアホみたいっつってなかった?
沖「よし、じゃあコレなんてどうでしょうか」
総悟はゴム手袋をして黒くて小さい丸いものを便器のど真ん中につけた。
土「ん?なんだ総悟それ」
清「それ私のホクロでしょーがァァァァ!!」
沖「いや、悪いなと思って流したフリしてとっといたんでィ。何か有効なことに役立てようと思って」
清「どこが有効!?人のホクロ小便で狙い撃ちさせるつもりですか!!」
沖「そうですか、すいやせんでした。桜ーそこのレバー流してー」
『あー…おっけー』
ジャアアアア
清「だから流すなァァァ!人の肉体の一部何だと思ってんだ!!」
土「オイ、もう何でもいいからよ適当に汚しとけよ。汚れだったら何でもいいからよ」
沖「ああじゃあこれで」
そう言うと総悟はどこからともなく出した土方さんの写真を便器にはった。
土「どーいう意味!?」
沖「真選組の汚れです」
『総悟それナイス。うまい』
土「うまかねーよ!!汚れてんのはてめーらのハラん中だろ!!ふざけんなはがせ!!」
沖「ついでに桜のもはっときやすね」
『オイ待てクソガキ』
ワイワイワイ…
清「!!あっ、誰か来ましたよ。みなさん隠れて」
出入り口の方を見てみると何人かの人影が見えた。私たちは急いで個室トイレに隠れた。
沖「…どうでしょうかね効き目は」
土「ふざけんな。あんなもん効くわけねーだろ」
『いや効き目抜群だと思いますよ。土方さんのだけ』
土「オイ桜、オメーこの事知ってんだろ。知ってただろ」
『さぁ?どうでしょうね』
土「ホンット性格わりーな」
ギイィ
清「あっ、行きましたよ」
私たちは人がいなくなったのを確認して外に出た。そして便器を確認した。
沖「あー失敗でさァ」
土「ホラ見ろ「ウンコされてます」どーいう事ォォ!?」
『どーいう事ってそーいう事でしょう。つーかそれモザイクかけてくない?』
沖「効きすぎましたね。対象物に対する憎しみが大きすぎたようです。こっちにいたっては写真が突き破られていますね」
土「どんな小便!?どんだけ嫌われてんだよ俺ァ!?」
沖「それに比べて桜の方はホラ見てくだせェ。ピカピカにやってやす。もう一枚は額縁に入れられて飾られてやすぜ。あと一枚はなくなってやすね」
土「扱いの違いにもほどがあんだろーが!!」
『てゆーか何私の写真飾っちゃってんの?つーか無くなった一枚はどうした。どこいった』
沖「まぁ桜の方はおいといて。キレイにしようってのにウンコされちゃ適わねーや。それに汚れじゃ見落とされちゃしまいですよ。どうですか、ここは発想させましょう。小便を便器にさせるんじゃなく小便を便器以外ではできなくしましょう。つまり床に小便をこぼしちゃいけない状況をつくるんです」
土「どんな状況だよ」
ワイワイワイ
清「あっ、誰か来た」
沖「桜次は手伝いなせェ」
『はい?』
ガララ…
「あーもそれっ…」
ゼーハァゼーハァ…
沖「ヘッ…ヘヘお前…なかなかやんじゃねーかよ」
清「ク…ククお前こそ」
『うっ……二人とも…』
沖「地面からお天道様あおぎ見るなんざ何年ぶりかな」
清「空って…こんなに広かったっけ」
沖「たまには…こういうのも悪かねーかもな」
『うぅっ…二人ともっ……私なんかのために……ごめっ…ごめんねっ…?』
沖「いーってことよ」
清「無事でよかった」
『あっ…ありがっ…とぉ…っ!!』
パタンッ
土「誰が小便できるかァ!!」
ドガッ
沖・清「ぐおふっ!!」
あーくだんなかった。私は三つ編みした髪をほどいた。
沖「男同士の友情と恋に水さす奴はいねーでしょ」
土「うまくねーんだよ!!むしろ腹立つんだよ!つーかてめーら、これから毎回厠に人来る度その完成度の低いコント繰り広げるつもりか!?つーか桜、その迫真の演技は何だ!?」
『人騙す程度の演技力は心得ています。ついでにこの涙は目薬です』
土「どんな心得だァ!?」
沖「じゃあこれなんてどうですか?」
総悟は一枚の板を持ってきた。
沖「このベニヤ板の穴の先に袋をつけてここにナニを…」
土「なんのプレイ!?」
『もー何でもいいんじゃないですか?つーか私女だから関係ないし』
土「ここまで関わっといてその言いぐさはなんだ!!つーか総悟コレ色んな奴がこの穴にナニをセッティングするんだろうが!不衛生極まりないわ!」
沖「大丈夫でさァ。不快にならねーようにここに女の顔を「おいィィィィィ!!もうそれ別の何かになってんだろーがァァ!!」
沖「んじゃー桜でもセッティングしやすか?」
『オイ、ぶち殺すぞ』
沖「意外と効果的だと思いやすが」
土「できるかァァァ!!それこそ不衛生極まりないわ!!んなことして紫にバレたらぶち殺されんぞ!!」
『私じゃなくて女の人の絵ぐらいだったら大丈夫だと思うよ。あ、口紅ぬる?』
沖「おーいいんじゃねーの?」
土「不衛生だって言ってんだろーが心身ともに!隈無、アンタも何か言ってや…」
清「私はもう少し穴をデカめにしてもらえますか」
土「何デカさ調節してんだてめーらは!!見栄はんじゃねェェェ!!」
『このぐらいですか?』
土「お願いだから桜戻ってきてェェェ!?お前の両親に申し訳なくなってきたァァ!」
フ〜ンフ〜ン
清「あっ、誰か来ました!隠れてください」
バタバタバタッ
私たちはまた個室トイレに隠れた。
「「「『・・・・』」」」
「「「『・・・・・』」」」
「「「『・・・・・・・・』」」」
土「随分静かだな」
沖「何やってんだ」
土「いつになったら出てくんだよ。オイちょっとのぞいてみろ」
『あ、土方さん。のぞかないほうが―』
ギイィ
土方さんたちは私の制止を聞かずに扉を少し開けた。その先にはナニをベニヤ板の穴に入れた近藤がいた。すると近藤さんは私たちの方を向き静かに涙をこぼした。
近「……抜けなく…なっちゃった」
「「「『・・・・・・・』」」」
ガララ…ピシャッ…
そして私たちは何も見なかったかのように黙って厠から退出した。
近「ぐすっ……抜けなく…なっちゃった…」
『近藤さん』
近「桜ちゃん!!」
『やっぱりまだ抜けてませんでした。でも大丈夫ですよ。このチェーンソーを使えば一発です』
ギュイィィィィン
近「あの…一発って…え、何?何が一発なの!?一発で逝けるってこと!?一発でナニとバラバラになれるってこと!?」
『はーい逝きますよー』
近「逝く!?やっぱりそうなの!?ねぇ!!ねぇ!!ねぇ!!!!」
ザクッ
近「ぎぃやアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」
この悲鳴は何(ナニ)が切れた悲鳴なのか、それは読者の皆様のご想像にお任せします。