真撰組物語

□“海へ行く”
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『寝たら?土方さん暫く戻ってこないし』

沖「じゃー寝る。膝かして」

『んー?はい、どうぞ』

私は本を読みながら体勢を横座りにかえた。総悟はすぐに私の膝を枕にして寝っ転がった。総悟に膝枕するのこれがはじめてじゃない。ここ最近しょっちゅうだ。
ま、別にいいんだけどね。それより…

『…暑くないの?』

沖「別にィ」

『ならいーけど』

私は地味に膝が暑いんですけどね。まぁそんぐらい我慢できるからいーけど。
私手に持っていた本をまた読み出す。それから暫くしたら下から寝息が聞こえてきた。

『…寝たんだ』

疲れたまってたのかな。ここ最近非番なかったみたいだし。だけどさ…

『それにしても無防備すぎるでしょ。こいつホントに私より年上?』

私は一度本を置いてあきれた目で総悟を見た。
いくら私がそばにいるからって…水着のまま寝るなよ。せめてパーカー羽織れって。

『はぁ…お腹冷やしちゃうじゃん』

えぇっと確か…私の荷物のなかにバスタオル入れたような…

『…あった。海入ったとき用に持ってきたんだけど いっか。別に海入らないし』

バサァッ…

私はたたんであったバスタオルをひろげて総悟にかけた。

沖「……暑い」

『ん?起きたの?』

沖「………暑い」

いかにも不機嫌そうな顔で言う。

『だーめ。そんな格好で寝たらお腹冷やすでしょ。かけてなさい』

沖「桜は俺の母ちゃんかよ」

『いーからかけてなよ。ホラ 保冷剤あげるから』

私は山崎さんの荷物から保冷剤を取り出した。
熱中症対策のために持ってきたんだろうね。さすが山崎さん。準備いいね。
私が保冷剤を総悟に差し出した。

沖「……」

総悟はそれを無言で受け取った。

『首の後ろにあてるといいよ』

私は自分の首の後ろを指差しながらジェスチャーする。
あ、でも私の膝に保冷剤直で当たるじゃん。絶対冷たいじゃん。

『ちょっと待った…ハンカチハンカチ……はい、これにくるんで使って。私の膝の上に保冷剤のせていいから』

沖「桜 やって」

そう言って保冷剤を私によこす総悟。
どんだけ我が儘?マジ 私あんたの母ちゃんじゃないんだけど。

『もぉ…しょーがないな。…………ほら できた、はい』

沖「ん…」

総悟は私からハンカチにまかれた保冷剤を受け取って私の膝の上におく。
…冷た。
保冷剤が気持ちよかったのかそのあと直ぐに総悟は眠りについてしまった。私は総悟が寝ている間に本を読み進めた。

















山「あれ?桜ちゃんと…沖田隊長?」

『え?あ…山崎さん』

山「二人はパトロールさぼり?」

山崎さんは苦笑いで聞いてくる。

『私は荷物番ですよ。総悟は…まぁサボり。その様子だと山崎さんはずっとパトロールしてたみたいですね。お疲れ様です』

山「も〜すっごい暑かったよ…てゆーか、また沖田隊長に膝枕やらされてるの?」

『昨日遅番だったみたいであんまり寝てないって言ってたんですよ。あっ、あと 山崎さんの荷物から本と保冷剤お借りしました』

山「あ、うん。別にいいよ」

『そこ暑いでしょ?パラソルの下涼しいですよ。入ってください』

山「じゃーお構い無く」

山崎さんは足についた砂を軽く落としてビニールシートの上に足を踏み入れた。そして私から斜めの位置に腰を下ろした。

『どうでしたか?パトロール』

山「小さい喧嘩とかいざこざとかはあったけど、女性を狙った暴行事件の手がかりはなかったよ」

『そーですか。てゆーか 他の奴等はちゃんとパトロールやってるんですか?』

山「それがさぁ みんな遊びに行っちゃって全然仕事してないんだよ!副長が走り回って注意してるみたいなんだけどさ」

『やっぱり…土方さんも大変だなぁ。みんな近藤さんいなくて少し気が抜けてるみたいだし、海に来れたからって浮かれてんですかね』

山「ホントだよ…俺だって砂浜でミントンの練習したいのに」

『砂浜でやる必要ありますか?それ』

砂浜でやるスポーツっていうならビーチバレーでしょ。ミントンって…。
私は読んでいた本を下に置いた。

山「そー言えば桜ちゃん、何か食べた?もうお昼過ぎたけど」

『いや 食べてないですけど……お腹すいた』

山「ずっと沖田隊長に膝枕してたんでしょ?俺何か買ってくるよ」

『私が行ってきますよ。…よっと…総悟ごめんね』

私は膝の上で静かに寝ていた総悟を膝の上からどかした。かわりにそこら辺にあった誰かの荷物を総悟の頭の下においた。
うお!膝に総悟の髪のあとついた。ま、いっか。

『山崎さんはお昼ご飯食べたんですか?食べてないなら私と総悟の分とまとめて買ってきますよ』

山「じゃあお願いできるかな?まだ食べてないんだよね」

『分かりましたー。買ってくるの何でもいいですか?』

山「うん、何でもいいよ」

『総悟も…何でもいいか。んじゃテキトーに買ってきます』

私は自分の荷物から財布を取り出しパラソルの外に出た。
あっつー…。

山「あっ!桜ちゃん!」

私がお昼ごはんを買いにいこうとしたら山崎さんに呼び止められた。

『何ですか?』

山「暴行事件の犯人がいるかもしれないから気を付けてね」

『分かってますよ。犯人みつけたらその場で取っ捕まえますから』

山「うん、桜ちゃんなら大丈夫そうだね」

『あったり前です。じゃー行ってきますね。あっ!あと、総悟が起きたらバスタオル 私のカバンの中に戻しとけって伝えといてください』

山「分かったよ」

山崎さんが手を振りながら私を見送ってくれた。そして私は財布を片手に一人で砂浜を歩いていった。

『ん〜何買おうかな。つーか何売ってんだ?』

焼きとうもろこしは総悟が言ってたからあるよね。…でも総悟のウソって線もあるな。
私は考えながらスタスタと歩いてく。暫くすると屋台がズラッと並んでいるのが見えた。

『えーっと…焼きそば 棒つきからあげ かき氷にジュース いか焼き たこ焼き……焼きとうもろこしないじゃん。総悟の野郎やっぱりウソついたな』

まぁいいや。何買おうかな。
私は屋台の前まできて何を買うか看板を見て悩んでいた。

『んー…焼きそばとからあげでいっか。あと飲み物かな』

山崎さんは兎も角 総悟はどうせ、かき氷食べたいだのたこ焼き買ってこいだの言うだろうから そういうのはあとで買うとして…

『ひとまず ちゃんとしたお昼ごはん買わないとね』

私はそう言いながら焼きそばの店の前まで行った。

『おじさーん、焼きそば3つ』

「はいよー!お嬢ちゃん可愛いからトッピング多めにしといてやるよ!!」

『マジですか。ありがとうございます』

ラッキー、得した。
おじさんは私の目の前で手際よく焼きそばを透明な入れ物につめる。
するとその時小さな声ではあったが女の子のせっぱ詰まった声が聞こえてきた。
…なんだ?
私は声が聞こえてきた方に耳を傾けた。

「…て…さい……やめてください!」

…やめてください?セクハラか?

私は声の主がどこにいるか辺りをキョロキョロと見回した。
どこだろう…―!!

『いた!』

私の視線の先には、無理矢理女性を人気のない岩陰へ連れていこうとする男の姿があった。
みるからに恋人…じゃないよな。

「お嬢ちゃん!!出来たよ!!600円ね」

『あーはいはい。600円ね、……はい おじさん』

じゃなくて。今は私のお昼ごはんよりあっちが先だ。

「まいどー!」

元気よく焼きそばの入った袋を差し出してくるおじさん。

『おじさん。あとで取りに来るから ソレ預かっといて!』

「えっ?!あ!お嬢ちゃん?!」

私はおじさんに焼きそばを押し付けて、あやしい男のあとを走って追いかけていった。
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