一直線ッ

□第3話
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【コート上の王様】


「「ふあ〜〜〜あ」」

「眠そうだなお前ら」

大地さんの然り気無い一言が龍とスガさんに刺さる。

「えっそお!?勉強のしすぎかなァ〜?」

「おっ俺も勉強のっ」

「(小声)お前に限ってソレはないだろ!」

「エ゛ッ」

「それに月ノ瀬も…」

「「え?」」

大地さんはチラッと私の方を見るとつられて龍とスガさんも私の方を見た。そして皆に注目されている私はというと…

ビターンッ

『いっ………たぃ…』

盛大にこけていた。

「俺アレみるの今日三回目なんだよな…」

「「わァーッ!!」」

龍とスガさんの焦った声が上から聞こえる。そして同時に私の方へ近づいてくる足音が二つ聞こえてきた。

「桜ー!!おまっ…今日何回目だよコレ!!」

「大丈夫か!?ホラッ…」

スガさんはそう言うと私の両脇に手を入れて私を起き上がらせた。もう、お母さんにしか見えない。

『おかーさん……』

「はいはい痛かったなぁ」

「ははっお前デコ赤くなってんぞ!?」

「笑うな田中!」

『くたばれハゲ…』

「お前もサラっと怖いこというな!」

私はギャハハハと笑う龍を睨みながら、スガさんにオデコをよしよしと撫でられる。

……眠すぎて死にそうだ…もう……五回目からこけた回数数えてない…

「月ノ瀬何か今日調子悪いな。三人揃って寝不足か?」

『あ、いや……龍を呪い殺す術を考えてたら夜が明けて……』

「あぁ……なるほどな」

「えぇ!?それで納得するんですか大地さん!?つーか桜そんなこと考えてたのかっ!!!」

「お前の勉強よりは説得力あるだろ」

「エ゛ッ!!」

私の咄嗟の嘘に納得したような大地さん。少し疑いの目もあったが、大地さんは話を切り替えた。

「まぁ良いや。今日から入部の一年紹介するよ」

「「『?』」」

私達三人は同時にクエスチョンマークを頭に浮かべた。すると二人の人影が私達の目の前に現れた。

「宜しくお願いしまぁーす!」

「「!!」」

『……………』

………巨神兵?

第一印象はそれだった。巨神兵が二体、烏野バレー部を攻めに来た。そんな感じだった。

うわーおっかね。

「デカイ方が月島でこっちが山口だ。月島、山口、右から田中に菅原に月ノ瀬だ…って。アレ!月ノ瀬!?」

「大地さん背中!スガさんの背中!」

「あっ…いつの間に」

「ははは……俺も今気づいた…」

そう言うとスガさんは体を動かさないまま手を私のいる後ろへのばした。そしてほぼ同時に聞こえてくる大地さんの声。

「コラ月ノ瀬!ちゃんと挨拶しなくちゃダメだろう?」

『よろしくでーす』

「違う!そこから出ろ!」

『……お父さんかよ…』

「…………スガ、そのまま捕まえてろよ」

大地さんはそう言うと私の後ろがわへまわってくる。

おー……ヤバイヤバイ…お父さんを怒らせてしまったようだ…

『…スガさん離してくだ「お父さんは絶対だから、ごめんなー」なんですと?』

「ほら逃げるな!」

グィッ

私は案の定大地さんにつかまった。大地さんは私をスガさんと龍の間に立たせた。そしてスガさんが右手、龍が左手、大地さんが頭をつかむと、私を人形のように動かした。

「二年マネージャー月ノ瀬桜」

「趣味は人見知り」

「小さいけどこれでも高校生」

ペコッ

「「「よろしく!!」」」

『………何これ』

三人は息をピッタリ合わせて私をお辞儀させた。そして頭を上げたときに見えた、変なものでも見るような目の月島と山口。

なんなんだ。あんたら三人打ち合わせでもしたの?いや、してあったとしてもしてなかったとしても悪意がこもってるようにしか思えない。

「プッ…」

「わ、笑ったら悪いよツッキー!」

ほら笑われた…

大地さんは満足したように私の頭を離した。すると今度は龍が私の左手をグーにして前につきだした。

「私がいくら可愛いからって手なんかだしたらぁ〜チョーッカッコいい龍くんが黙ってないからぁ〜そこんとこ……よろしくだコラァ!!!」

・・・・・・・・。

一瞬起きた沈黙。私も突然すぎて何も反応できなかった。

「ちょーかっこいー龍くんって誰だー」

「勿論チョォーカッコいい俺のことです!!!」

『その嘘しか言わない口を閉じろカス』

「うっ嘘!?……」

龍はショックをうけて私をつかんでいた手を緩めた。そして一息つくと二人の新入部員を見た。

『別に人見知りとかじゃないから、普通によろしく』

「ハ、ハイ!!」

「……は〜い」

それぞれの反応で返事をする二人。それを見た大地さんとスガさんが私の頭をガシガシと撫でる。

「成長したなぁ月ノ瀬…」

「一年前は自分から喋りもしなかったのに……えらいえらい!!」

「あっ!ズルいっスよ二人とも!!俺も俺も!!」

『いい加減練習始めませんか』

ここで止めなければあと数十分は続くであろうこの茶番を終わらせたい。その一心で私は止めに入った。

すると大地さんは笑いながら“そうだな”と言った。

「そんじゃー練習始めるか。月島と山口も今日から練習参加してってもいいからな」

「あっ、今日は俺もツッキーも挨拶だけと思って何も持ってきてないです…」

「そうか。なら、明日の日程月ノ瀬から聞いたら今日はもう帰っていいぞ」

そう言うと大地さんを先頭にスガさんと龍は柔軟をしに行ってしまった。残されたのは私と一年二人。

『…明日は午前中に試合、午後に練習と、ミーティング入るかな…入るかもしれない。うん…以上。質問ある?』

「いやっ大丈夫です。ね!ツッキー!」

「うるさい山口」

「ごめんツッキー!」

……山口に冷たいなツッキー。…あ、じゃなくて月島。もうツッキーツッキー言うからうつっちゃった…

私は心の中でそう思っていると、少し離れたところからスガさんの声が響いた。

「月ノ瀬ードリンクの準備頼むー!」

『はーい、すぐやりまーす。…じゃあ明日。遅刻しないようにね』

私はそれだけ言うと、スガさんに頼まれた通りドリンクを作りにいった。そんな後ろでこんなことを話されてるとも知らずに。

「ツッキーツッキー!あの人噂の二年生だよね?すっごい可愛いね!バレー部のマネージャーだって本当だったんだ!!」

「………………」

「……ツッキー?あれ…?もしかして見惚れ「うるさい山口」ごめんツッキー!…ってえぇ!?本当に!?」












「………けっ!なァ〜んか気に入らねーなさっきの新一年!」

「お前初対面の奴大体気に入らないじゃん。アレだろ。そういう習性だろ」

「“習性”って…」

『当たってんじゃん』

私はあれからドリンクの下準備をし戻ってきた。すると龍とスガさんがさっきの一年生について話してた。

「でも…予想以上の来たな……明日大丈夫か」

『巨神兵でしたねー』

「…例えが微妙だな。言いたいことは分かるけど…」

「だ、大丈夫ですよ俺だって入るんスから!!」

ドンッ

そう言って龍は自分の拳で胸を叩いた。そんな龍を見てスガさんは…

「……そうだな影山も居るしな」

「……………」

……龍じゃ不安なのか。

「でもさ影山ってな〜んか中学ん時より大人しくない?」

「えぇっ!?どこがスか!?クソ生意気じゃないスか!」

あれで大人しいとか……本来の影山は一体どんなやつなんだ…

「中学の時はもっとこう…絶対的自信を持ってたというか破天荒というか――…」

「?どっちみちクソ生意気です」

「お前に聞いたのが間違いだった!」

「……………っ桜ー!」

『あー…スガさんが正しいから寄ってくるな鬱陶しい』

「鬱陶しいっ!?」
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