蜂蜜果蜜

□蜜九滴
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「なァ、もっかいアレやってくれや」

『しつこい』

はい、どうも。数日前に熱を出した桜です。今隊長に何をねだられているかというと…

「別にええやんか。可愛かったでー桜チャン。ぎゅーってお布団抱き締めて“やだぁ〜”ってなァ」

『いい加減忘れてください。それから仕事してください』

あ゛ー…何で熱なんか出しちゃったんだァー…それに隊長言ってるそこら辺の記憶曖昧で覚えてないし…

「こォー熱で目が潤んで駄々こねる子供みたァーに『うるさい』ホントのことやんけ」

『だからってそーネチネチネチネチ…あんたは京の女か。そんなに人いじめて楽しいんですか?この腹黒パッツン』

「いじめてんのとちゃう。可愛がってんや」

『尚更性格悪いっつーの』

「俺は純粋に楽しんどるだけや」

言い切りやがったよこの男。

『もう知らん…一人でやってろ。私は書類届けてきます』

これ以上ここにいたら平子隊長の遊びの的にされると思い、私は書類を届けに出ようとした。

「迷子になってももー迎えに行かんからなー」

『一度も迷ったことないです。いー加減そのスッカスカの頭に叩き込んでください』

「オイ、誰の頭がスカスカや」

『あなたのですよ』

「そーゆーことちゃうねん」

『そーゆーことです』

お互い真顔で毎度お馴染みのやり取りをした。しばらくこのやり取りをしていると、廊下からドタドタドタッと誰かが走っているような足音がした。

つーか前にもこんなことが…

そして思った通り彼女が現れた。

バーンッ!!

「いてるか桜っ!!!!」

ひよ里は慌てた様子で執務室に入ってきた。と言うか押し入ってきた。

『襖壊れるんだけど』

「そんなんどうでもええねん!!」

『いや、よくねーから』

「ええんや!!!!ヤツが出たことに比べればなァ!!」

「ヤツって何やねん」

「何や。いたのか真子。カゲ薄ーて気づかんかったわァー」

「一々嫌味なやっちゃな…それでヤツって何やねん」

平子隊長が興味無さそうにも聞いた。それに対してひよ里はまた焦ったような顔をした。

「ヤツはヤツや!!!!つー訳やから桜借りてくで!!」

グイッ

『はい?』

そして理由を聞く間もなく私はひよ里にズルズル引きずられてった。

ズルズルズルズル…

「オイッちょ…待てや!!」

止める平子隊長の声も聞こうとせず、ひよ里はお構いなしに私を引きずっていく。

ズルズルズルズル…

『あのーすみませーん』

「何や。それより十二番隊舎遠いから瞬歩使うで」

『その前に引きずらないでもらえます?』

「喋っとると舌噛むで」

『人の話聞け』
















『で、何?』

私はあのままひよ里に引きずられて来られた。そしてここは十二番隊舎にあるひよ里の部屋の前。

『人の話を聞かず引きずってまで連れてきたのに相応しい理由はあんだろーな』

「ある!!!!」

そう自信満々に言うひよ里。そして私を盾にするように部屋の中へ入った。

…何故私を盾にする?

「さっき見たんや!ヤツを!!」

『だーから…ヤツってなに』

「ヤツはヤツや!!くっ…黒くて丸くててらてら光ってカサカサと怪しく動くアイツがっ!!!!」

…黒くて丸くててらてら光ってカサカサと怪しく動くアイツ……まさか…

『……アイツか』

「そうや!アイツや!!」

『出やがったか…』

「出てきおったんや…」

私とひよ里は部屋のど真ん中で固まった。

あー…出てきやがったか。最初にここに来たとき思ったんだよね。出そうだなーって。でもまさか本当に出てくるとは……

『てゆーか何で私呼んだの。こういうのって普通男呼ばない?』

「アホか!そんじょそこらの男よりも桜の方が強そうやからや!!」

『うん、ごめん。よく分からない』

「ええから早よ始末しろや!!うちこんな部屋で寝たないねん!!」

そう言って私の背中をグイグイおすひよ里。

『ちょ…待て。ヤツを始末するなんて無理無理。私カサカサ動くのとかヌメヌメしてるのとか大嫌いだから』

「はァっ!?何やそれ!!聞いてへんぞ!!」

『だって言ってなかったし。ヤツ相手にするくらいなら不逞浪士100人の相手した方がマシ。ってことで…』

私はくるっと後ろを向いてひよ里の手を掴んだ。

『健闘を祈る』

「お前っ!見捨てる気かーっ!!!!」

『大丈夫大丈夫。骨は拾ってあげるから』

「縁起でもないこと言うなや!!マジ頼むから!一緒にヤツを始末してくれ!!!!」

そう言って必死に私をここにとどめようとしているひよ里。

いやね、ひよ里さん?私もヤツは大の苦手なのだよ。一秒でも早くこの場から立ち去りたいのだよ。いくらひよ里の頼みだからと言ってもこればっかしは無理な話だ。

「頼む!!!!今度うまい菓子奢ったるから!!!!」

そう…例えお菓子が絡もうと…

『よし、一緒にヤツを抹殺してやる』

全力で叩き殺させてもらいます。

「よっしゃ!!流石桜や!!」

『はいはい、そんな大声あげるとヤツに感ずかれ―』

カサカサカサッ…

「『・・・・・・・・。』」

「…お、オイ…今カサカサいわんかったか…?」

『……いったねー…』

「ど、どうする?」

『とりあえず…いったん部屋からでようか』

「そそそうやな…」

私とひよ里は息をおし殺して、お互いの腕を掴んだまんま横歩きで部屋を出ようとした。

カサカサカサッ…カサカサカサッ…

「『っ!!!!!!』」

するとまたカサカサと音がした。

『……何これ。動くなってこと?動くなってことだよなーコラ』

「動いとる音すんのに何でヤツの気配はしないねん!化けモンか!!」

『化け物だな。いや、化け物通り越して未知の生物だ』

「どうする桜…このアホみたァなカッコーから動けへんで」

『どうするもこうするも…動いたらヤツも動くみたいだしねぇ。てか中腰って結構キツいんだね。足プルプルしてきた』

「生まれたての小鹿みたァな足しとるで」

『そう言うあんたもプルプルしてんじゃん。つーかひよ里の身長に合わせてる私の方が辛いんだからな』

「しゃーないやろ!身長足りひんモンは足らんのやから!!つーかお前も似たような身長やんけ!!」

『はいはい分かった…キリないからやめよ』

「…そうやな」

冷静さを取り戻した私とひよ里は深呼吸をした。そして目と目で合図をとると、ゆっくりと足を動かした。

その時もう一人のヤツが現れた。

「何してんねんお前ら」

「『だァァァァァァ!!!!!!』」

カサカサカサッ!!

「『ギャアアアアアアアア!!!!!!!!!!』」

ドタドタドターッ!!

私とひよ里は平子隊長とヤツのダブル攻撃で一気に廊下へ飛び出た。それを見た平子隊長は変なものを見るような目で私達を見た。

「…色気のない叫び声やなァ」

「うっさいわハケシンジ!!!!何してくれんねんドアホッ!!!!」

ドカッ!!

「グフッ!!!!」

『ふざけんじゃねーよパッツン。死んで詫びやがれ』

チャキッ…

「刀抜くなや!!何で声かけただけでそこまで言われなアカンねん!!!!」

「『お前が悪いからだ』」

「なんでやねん!!!!」

私とひよ里は鬼の形相で平子隊長を怒鳴り付けた。

「つーか何しに来たねん。今うちと桜めっちゃ忙しいんやけど」

「何しにて、お前が勝手に桜チャン連れてくから連れ戻しに来ただけや。仕事中に一体何してんねん」

『生きるか死ぬかの戦いです。首突っ込むとヤツに殺されますよ』

「そーや。分かったらとっとと帰れ!それにここ女子寮やぞ!」

「別にええやんけ。どーせひよ里の部屋やしなァー。お前の部屋になんか微塵の興味もないわ。つーかさっきから言っとるヤツって何なんや?」

そう言って平子隊長は起き上がり死覇装をパンパンッと叩いた。

「ヤツっつーのは…こォ…黒くて丸くててらてら光って…」

『カサカサと怪しく動く…ヤツですよ』

「何や?それただのゴキ「『その名を呼ぶなっ!!!!』」

ドカバキィッ!!←※ダブルパンチの音

「ゴフッ!!」

「名前呼んで出てきたらどうすんねん!!アホかお前は!!!!」

『ホントアホですね。隊長責任とれるんですか?指何本で責任とってくれるんですか?できるんですか?』

「アホはお前らや!!!!隊長ドカドカ殴ってええと思っとんのか!!」

「別にええろや。うちんとこの隊長とちゃうねんから」

『それにどーせ平子隊長ですし』

「そーやな。いくら顔殴っても平たいしなァ」

私とひよ里は顔を見合わせて“だよね?”と言い合った。

「こんの…クソガキコンビが…」
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