the Wonderful Days

□Act.3
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その日の夜、一階の其処は酒場に様変わりしていた。




二十卓程あるテーブルには体躯の良い男達が座り、店の奥に設置されているソファ付の席にも数人ではあるが座っている。

恐らくその数人は隊長格。

周りも「隊長」と呼んでいたのでそうなのだろう。




そしてその隊長格の席にはジェイドが他の店から態々呼んだ、着飾った女性達。

所謂そういう仕事の、だ。

店側に事情を話せば、特に人気の高い人達を寄越してくれたらしい。

その甲斐あって個人差はあれど楽し気だ。




「イスズ、追加頼む」

『あいよ。にしても良く食うね』




手伝いをしているイスズはカウンターで簡単なつまみを作る。

目の前の席に座るエースは酒は飲むし食う物は食うが、女性達の方へは行こうとしなかった。

向こうに行かないのか、と視線を遣っても首を振る。




皿に盛りつけながら聞いた。




『女は苦手?』

「いや、そういうわけじゃねーけど。飯食ってたほうがいいし」

『経験はあるでしょ』

「まあ…」




綺麗に盛り付けたそれを出してやれば昼間の様に目が輝く。




「おっ美味そうだな!」

『色気より食い気ってことか』




エースが注文するのは主に肉料理ばかり。

食う量からして大食いだとは思っていたが、いくら作っても一向に満腹になる様子は無かった。

しかも口に物が入っている時に、何故か寝てしまう。

折角作った料理に顔を突っ込むのはいただけないとは思いつつ、笑ってしまう。




口の中に吸い込まれていく様子を眺めていると、向こうから誰かがやって来た。

リーゼントとも言えるのか分からない髪型の男だ。




「エー―スーーー、おっ前あっち来ねーで何してんだよぅ」




大分酔いが回っていると思えるその男は片手にジョッキを持ち、エースの首に腕を回す。

同時にエースの顔が鬱陶し気に歪められるとイスズは吹き出した。




『顔やべーよ』

「ウルセェ」

「おお?なーにお二人さん、仲良さそうじゃねーの。キミここで働いてんの?」

『そうだよ』

「ちゃっかりしてんなぁ、エース」




不機嫌そうにまた顔が歪むのに気づいていないのか、ニタニタと笑う。




「名前は?オレはサッチってんだ」

『イスズ。エースとは昼間に会ってね』

「あーあのオッサンが可愛がってるって子か。マルコから聞いたぜ」

『オッサン?』

「ジェイドだよジェイド」

『ああ、うん』




にしてもあのエースがなあ、と感慨深い言い方をするがその顔は面白がっている。




「だあああ!ニヤニヤすんなサッチ!」

「えー?だってお前上陸してもあんま女も買わねえし、これでも心配してんだぜー?」

「余計なお世話だ!」




二人が騒いでいるとまた一人向こうからやって来た。
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