the Wonderful Days
□Act.1
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赤い大陸(レッドライン)後半の海、新世界。
前半の海よりも過酷で困難、そんな海に於いて最も名の知れた大海賊がとある島に上陸していた。
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「以上。今回の上陸での振り分けは分かったな。各自調達する分は早めにしておけよい。ただ食料に関しては最終日もしくは残りの二日で済ませろい」
いいな、そう言い、片手を腰に当てるのは白ひげ海賊団一番隊隊長、マルコ。
隊長としてだけではなく、船長白ひげの右腕としても一目置かれている。
その眠たげな眼が円卓の一角に座る、いや寝ている一人に向けられた。
「ジョズ、そのバカ叩き起こせよい」
ジョズと呼ばれたのは三番隊隊長。
隊長格の中でも大きい体の彼の隣には黒髪がテーブルに突っ伏していた。
呼ばれたジョズは苦笑しながら揺り起こす。
叩き起こせと言われてもそうする辺り、人が良い。
「んぁ、何だ、終わったのか…?」
「終わったよい。テメェが寝てる間に全部な!」
「あでっ!?」
寝ぼけ眼を擦る二番隊隊長、火拳のエースの脳天に拳が振り落とされる。
自然系の実を食べたエースには只の拳は効かないため、勿論覇気を纏って。
一連のいつものやり取りに他の隊長格も笑い声を上げた。
「俺の隊は?フリーか?」
「二度は言わねえよい。居眠りしてた自分の責任だよい」
「ええー!」
「まあまあ。エース、お前んトコは武器庫の備品調達だぜ」
眉を下げる末の弟の肩を叩くのは四番隊隊長、サッチ。
通常より大分、いやかなり存在感のあるリーゼントと黄色いスカーフがトレードマークである。
さりげなくフォローに入る様子を眺めて可笑しそうに笑う、サッチの向かいに座る和装の男。
十六番隊隊長、イゾウはゆったりとした袖に両手を隠しながら揶揄う。
「エースの居眠りはいつになったら直るのかねえ」
「でも真面目に起きてたらそれはそれで異常だよねー」
その隣でにこやかに笑い、頬杖をつくのは十二番隊隊長ハルタ。
周りの隊長達が特に大柄な所為かやけに小さくみえてしまうが、常人程度の身長はあるのだ。
今回の上陸の詳細を伝えたマルコは会議に終了を告げる。
毎回上陸の際はこうして各隊長が集まり、島の情報確認と役割の振り分けを行っていた。
それぞれ立ち上がり会議室を後にする中、サッチがニヤついた顔でマルコの肩を組む。
「何だよい」
「いんやぁ?今回の島は楽しそうだなーと思ってよ。お前こないだゆっくり出来なかったって言ってたろ」
「どっかの誰かさんが厄介ごと起こしてくれたからな」
先に廊下に出ていたエースが振り返り目尻を吊り上げた。
「あれは不可抗力だっつーの!座った隣に海軍いるとか思わねーだろ!」
「その前に服で気付けよい」
「アイツ休みだったんだってよ。だから私服着てた」
「ぶはっ、何ちゃっかり仲良くなってんだよ!」
サッチは吹き出し腹を抱えて笑い転げる。
途中、マルコの部屋に寄り、手にしていた分厚い資料を置いてから食堂へ三人は向かった。
今の時間は昼食時よりも少し早いが既に料理が出来上がり始める頃。
人よりも数倍大食いのエースは、大量に料理を確保するためいつもこの時間に来ている。
食堂のドアが目に入ると突き破りそうな勢いで開けていた。
後から歩く兄二人は片や頭を抱え、片や微笑まし気にしていた。