夢視
□02 一人目
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side仁王
土曜じゃというのにコートを囲む女子達は悲鳴を張り上げて叫んどる。
ご苦労なことだ。
こっちにしてみれば迷惑以外の何モンでもないが。
四月に入り大会が近くなってからというもの、真田の暑苦しさにも拍車がかかってきた。
よく矛先を向けられる赤也も不憫じゃな。
そんなことを考えながらラケットを回していると、ふとコートの外に目が行った。
大勢いる外野のさらに向こう、ほとんど人で見えないような後方にそいつはいた。
校内にいるには可笑しすぎる私服姿でうるさいギャラリーを呆れた目で眺める女。
明らかに浮いとる。
そんなことは気にならないのか悠長にポケットに手を突っ込んで。
格好も浮いとるがそいつの周りの空気が何より違う。
じっとその女を見ていると目が合った。
視線がかち合うと女は目を一度瞬いて逸らしもしない。
逆にこっちが観察されている気分になってきた。
可笑しな女、そして、
(面白そうじゃの)
side仁王:了