神鳴り様が落ちてきた

□序
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『……なぁんで、こんなトコに来てんだかね』




つい昨日の会話を思い出し、深くため息を吐く。

事の発端は例によって重國からの呼び出し。




急ぎ向かえば、唐突に現世へ向かえとの命が下った。

それも黒崎等の現世ではなく、これまでは管轄外だった筈の別の場所である。

そもそもその現世は基本的に死神が派遣されることは無く、自然の成り行きに任せることになっていた。

なのに何故。




「近頃向こうへ流れ込む虚が多すぎるでな。頼むぞ」




真面目面して言えばいいと思ってあの野郎。

しかし、ここの人間の霊力の高さは異常である。

一般人でさえも、霊が見えていないのが不思議な程だ。




霊力は高いが虚の姿は見えない。

奴等にとっては格好の餌。

何にも知られずに食事にありつけるのだから。




『全く、ハリベルは何をしてるんだか』




そう、虚圏との戦いが一段落した今は停戦状態にある。

現在あの場所を統治しているのはハリベルだが、現世に虚を送り込むようなことはしない奴だ。

だからこそ原因を探りに私が来ている。




此処に来てから既に十体は斬っている。

空座町並みの多さだ。

いくら伝令神機で連絡が入るといえど私の身は一つしかないのだから、追いつくわけがない。




『もう少し人員寄越せっての。……何だ?』




不満を口にしていると、島の外に微弱な霊力を感じた。

数は複数。

大分距離があるのか酷く薄っすらだ。




この程度なら何処にでもいると判断し、先へ進もうと島の上空へ飛び立った。

しかし直ぐに踵を返すことになる。

その微弱な霊力の周りに虚の霊圧を捉えたから。




『言ってる側からこれか。本当に多いな』




義骸には入っていない為、瞬歩で駆ける。

伝令神機が懐で鳴るがこのタイムラグはどうにかならんのか。

虚が魂魄を襲ってからでは遅いぞ、涅に改良するよう言わねば。




島を出て海の上を走ると辿り着いたのは、巨大な白鯨の船だった。

黒崎達の現世でもこれ程大きいのはなかなかお目に掛かれないんじゃないか。

とか思っている間にも虚が甲板に居た人間を食おうとしている。




見れば船の一部の人間にはどうやら見えているようだ。

ふむ、霊感のある奴か。

一人二人ではあるが初めて見る化け物に腰を抜かし、座り込んでしまっている。

仕方がない、だが、




『ちとビビり過ぎだ、小僧』




虚と人間の間に入り、白雷を打つ。

顔面を貫かれた虚は短い断末魔を響かせ消えた。




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