ベイカー街の亡霊と迷宮の十字路
□ベイカー街の亡霊
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「ブロンズ像の短剣は、シンドラー一族の先祖から伝わる、由緒正しいものだそうですね」
「いかにも、その通りだ!!」
「そんな短剣を、あなたはどうして凶器に使ったんです?
凶器はどうしてもあの短剣でなければならなかったとすれば」
「!?」
優作の話の途中、聞こえてきたのはゲーム世界でジャック・ザ・リッパーと対面しているコナンの声
【オマエの望みは何だ?
ジャック・ザ・リッパー!!】
【望みだと?】
【母親を殺害して、長年の恨みを晴らした今、何を望む!?】
【生き続けることだ!!
俺に流れている凶悪な血を、ノアの方舟に乗せて次の世代へとな!!
ハーッハッハッハッハ!!】
コナンとジャックザリッパーの声が聞こえる
「これが、樫村殺害の動機ですね」
「・・・・・・・・・」
「ジャック・ザ・リッパーの血は、まるでノアの方舟に乗せられたかのように、現代まで生き続けた。
あなたは、ジャック・ザ・リッパーの子孫ですね」
「!!?」
「ジャッ、ジャック・ザ・リッパーの」
「子孫!?」
優作の言葉に驚く警部たち
「恐らくヒロキくんは、DNA探査プログラムでそれを知った・。
IT産業界の帝王が、百年前の連続殺人鬼の子孫などと知られたら身の破滅。
だから、口封じのために、ヒロキくんを自殺へ追い込み、さらに樫村を殺害した」
「・・・・・・・・・」
シンドラーは、観念したのか、顔を俯かせ、ポツリポツリと話し始めた
「あれは、ヒロキが私のコレクションを見に来た時だ」
<これはエジプトのクフ王が使ったとされる黄金の杯・・・。
次が鑑真和尚の教典。
そして、江戸川乱歩の心理試験の自筆原稿>
<すごいんだね。
この短剣は?>
<ん!?
あ、いや。
それは、百年前の連続殺人鬼、ジャック・ザ・リッパーの凶器だそうだ。
ホントかどうかわかったもんじゃない>
<ふーん>
「ヒロキは実験のため、身の回りで集められるだけのデータを集めて、コンピュータに入力したんだ」
「短剣から検出されたハニー・チャールストンのDNAが、あなたのDNAと合致した。
あなたは恐れた。
いつかヒロキくんが、ジャック・ザ・リッパーは、ハニーの息子だと知ることを。
あなたのことをジャック・ザ・リッパーの末裔だとわかるのは時間の問題だと」
「私は怖かったんだ!!
先祖に殺人者がいることが分かってしまうことが!!」
「世間の目がなんです!!
どうして戦おうとしなかったんです!!」
「・・・・・・・・・」
「トマス・シンドラー。
樫村忠彬さん殺害容疑で逮捕する!!」
現実世界での事件は、静かに幕を下ろしたのであった
・・・・・・・・・