パロ

□蠍の魔女
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幽霊船での出来事から数日後、本日の授業が終わった笠松と森山は昼食を食べに死武専の食堂に来ていた。
様々な国から来る生徒がいつでも故郷の味を食べれるようにと各国の料理があるのがこの食堂の魅力である。
笠松は好物の肉じゃがを森山は死武専名物デットチキンを注文し空いている席を探していると見馴れた金髪が目に入った。

「おー。宮地、福井。隣いいか?」

宮地達と笠松達は同期で同じ日本出身ということもあり仲が良い。
そして死武専では有数の実力者だ。

「おう、座れよ」

福井が隣に座るように促す。
こういう時話題になるのは最近行った課外授業の事だ。
特に二組とも前回の授業で大物と対峙している。

「そういえば笠松、お前らも魔女にあったんだってな」

宮地がそう切り出すと笠松は驚いたように肉じゃがを摘まんでいた箸を止めた。
森山はその時の事を思い出したくないとばかりに項垂れている。

「って、どした!!森山!?」

「あれは最悪だったんだ…」

どんよりオーラ全開ゲンドウポーズで項垂れる森山にびっくりする福井。
その様子を見て笠松ははぁ、とため息をついた。

「魔女が男だったんだよ。」

「あぁなるほど」

魔女の戦闘で何か恐ろしい目にあったのかと心配した福井だが理由を察すると面倒臭いとばかりに森山を放置した。

「で、魔女がどうしたんだよ?」

笠松が話題を戻す。
つくづくこの相棒は話をそらすのが上手いようだ。

「俺達も魔女にあった。その魔女とお前らがあった魔女が繋がってるんじゃないかと思ってな。」

「なるほど…。でもな…」

笠松と森山は魔女に襲われた後輩を助けただけでその魔女、つまり今吉の情報をほとんど持っていない。
あの時ちゃんと訊いておけば良かったと思うが、疲れた表情の後輩にあれこれ質問するのも躊躇われた為後回しにしてしまったのだ。
笠松がどうしたものかと唸ったとき笠松達の所に三人組が寄ってきた。

「あっ、笠松さん森山さん。この間はありがとうございました。」

ひょっこり現れた眼鏡の後輩にナイスタイミングと笠松は心の中で称賛した。

「よう、日向。ちょうどいい、今魔女について話してたんだがお前の話も聴きたいんだがいいか?」

日向はあっさり承諾すると一緒にいた武器の二人ともに笠松達の向かい合わせの席に座りあの時の幽霊船での出来事について話始めた。

「―――以上です。その後は笠松さんも知ってるかと」

「つまり纏めると、あの幽霊船は今吉の義弟が生み出したものでそいつの目的は職人と武器の狂気についての研究ってか。」

今吉自体の情報が少ないな、と福井が呟いた。
今吉は義弟についての話はしていたが自分についてはほとんど話して居なかった事が判る。

「気になるのはその義弟だよな。宮地達が会ったのがそいつって可能性は?」

「コガは多分そうだろうって推測してました。俺達はその魔女について全く知らないので何とも言えませんが。」

幽霊船の中にいたゾンビは花宮の魔法だった事から今吉と花宮が兄弟の可能性が高いと小金井は言っていた。

「小金井が言うならそうなんだろうな。俺達が出会った魔女と一番話してたのは小金井だし。」

福井はあの時の事を思い出す。
宮地ともに駆け付けた時に小金井は既に魔女と対峙していた。

「ってことは花宮と今吉が兄弟か…」

「花宮!?」

今まで黙って話を聴いていた木吉がガタンと大きな音を立てて立ち上がった。

「花宮が居たんですか!?」

木吉は顔色を変え、福井に詳しく話せと促すように迫った。

「木吉!!落ち着け!!」

日向と伊月が木吉を諌める。
その反応を見てもしやと宮地は木吉と花宮の関係を考えた。

「もしかして花宮って…」

「はい。俺を人体実験に使った魔女です。俺はその時狂気を植え付けられた…」

木吉が死武専に来る前、木吉はとある魔女の実験台にされた過去がある。
木吉が常人には扱い難かったり、威力がデスサイズ並みに高いのはその時の事が影響だ。

「もし、花宮がまた誰かを使って人体実験しようとしてるなら俺が止めなきゃいけない。」

「だアホ」

追い詰められた様な木吉の表情を日向がシバいた。
木吉は呆けた顔で日向を見ている。

「なに一人で戦います!みたいな顔してんだ。お前が戦うなら俺も伊月も一緒に戦うんだよ。その事忘れんな」

「決定権は常に職人にある。例え木吉が一人で戦うって言っても日向は一緒に戦うと思うぜ?勿論俺も」

「日向、伊月…」

おほん、と森山がわざとらしく咳払いした。

「お前ら自分達だけで魔女を倒す気か?」

前回今吉に手も足も出なかったと日向達はうっ…と言葉に詰まる。

「相手は魔女だ。チームを組んだ方が良い。」

「まぁどっちにしろ今は情報が無さすぎる。小金井からも話聴きたいんだがあいつは?」

福井が食堂を見渡したがそれらしい人影はない。

「あぁ、コガなら黒子と一緒にNOTの後輩がしばらく寮に帰ってこなくて」

「そうなのか…」

宮地達も寮なのだが最近忙しかったからか全く気づいていなかった。

「そいつ…、降旗なんですけど何日も無断で外泊するような奴じゃないので変なことに巻き込まれてないか心配なんです。」

「それは不安だな…よし!」

森山がガタンと立ち上がった。
笠松や宮地たちも食器を片付けて立ち上がる。

「俺達も探してやるよ。」
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