パロ

□悩める後輩
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月明かりに照らされた街の外れに不気味な笑い声が響く。
その声の主を二つの人影が見つめている。

「ギヒヒヒ…」

左右の手は狂気めいた刃に変わり身体中が継ぎ接ぎだらけだ。
人の形を棄てたその異形は人の血を求め街を徘徊していた。

「火神君…。あいつ,人間ですよね?」

黒いコートをたなびかせ、異形を見つめる黒子は自身の持っている鎌に話しかけた。
黒子の持っている鎌はただの鎌ではなく、武器に変身できる魔武器と呼ばれる者だ。

「俺だって鎌だぜ?黒子。姿形は問題じゃねぇ」

鎌の姿のまま応えた火神に黒子の隣に立っていた小金井が続ける。

「そーそ、問題なのは魂さ!」

そう言うと小金井は自分の右腕を刃に変化させた。
小金井もまた魔武器である。
同じ腕が刃になったといっても、あの異形の刃とは違い小金井の稲妻を模した刃は美しい。

「行きます。」

黒子が駆け出す。
小金井も黒子に続いて駆け出した。

「殺人鬼ジョー!貴方の魂頂きます!」

黒子は鎌でジョーに斬りかかった。
柄の長い鎌を上手く操り、次々と斬撃を繰り出していく。
反撃しようにも大鎌特有のリーチの長さを生かして攻撃してくるためジョーの刃は届かない。

「ぐうう…」

嵐の様な攻撃を防ぎきることは出来ず、ジョーの体に傷が刻まれていく。

「これでとどめです!」

黒子が鎌を大きく振りかぶった隙をつき、ジョーは黒子に背中を向けて逃げ出そうとした。

「はいはい,俺もいるよー。」

しかしジョーの背後にいた小金井によって阻まれる。
小金井が右腕の刃でジョーを貫こうと刃を突き出す。
ジョーはそれを人体改造で得た右腕の刃で受け止めた。
二人の刃がガチガチと音を立ててぶつかり合う。
禍々しく荒々しい刃が小金井の肩に傷をつけた。
それを見たジョーがニタリと笑う。

「すごいだろ…?俺はこの刃をもっと血で染めるのだぁぁぁァァァァアア!!」

狂った様に笑いながら小金井の刃を弾く。
これが普通の剣や槍なら折れていただろう。

「こんにゃろ…!」

小金井が左手に力を溜めるように強く握る。
そして溜めた力を放つ様に開きながらジョーに突き出した。

「魂威!」

左手がジョーに触れた瞬間小金井の圧縮した魂の波長が炸裂する。

「ぐわぁぁ…!!」

黒子によって切り刻まれた体に小金井の魂威が撃ち込まれジョーが大きくよろけた。

「黒子!今だ!」

「はいっ!」

黒子は満月を背に高く跳躍し鎌を振り上げた。

「何故だ!どうしてお前らは好き放題人殺しが許されるのに俺はダメなんだぁぁぁあ゙あ゙あ゙!!」

ありったけの憎悪の感情を黒子に向けて叫ぶ姿を黒子の冷たい瞳が映す。

「別に好き放題してる訳ではありません。」

冷徹に言い放ち、黒子はそのまま鎌で頭からジョーを叩き斬った。

「ああぁぁあ゙あ゙あ゙!」

断末魔と共にジョーの肉体が消滅する。
そこに残ったのは禍々しいオーラを放つ魂だけだった。

「黒子、火神。お疲れー。」

小金井が右腕を人の手の形に戻す。
黒子も鎌から手を離した。
鎌は赤毛の長身の男へと姿を変える。

「小金井先輩もお疲れ様です。」

「手伝ってもらってわりぃ…です。」

互いに労いの言葉をかけながら、火神がふよふよと浮いている魂に手を伸ばす。

「それで何個目?」

「30個ほどですね。」

黒子達のような武器職人の使命は魔武器を使い魂を集め死神の武器をつくること。
今回のように悪人の魂を狩り魔武器に食べさせるのだ。

「すごいなぁ〜。俺なんてまだ1つしか食べてないぜ〜。」

「そりゃあ先輩はまだ武器として活動始めたばかりなんだから当たり前だろ、です。」

「わかってるけどさぁ〜。」

小金井はついこの間までは黒子と同じ武器職人であった。
しかしある日魔武器として覚醒し、今は職人のいない武器として活動している。

「先生に報告しに帰りましょうか。」

黒子の言葉に頷くと三人は先程の戦闘など無かったかのように談笑をしながら帰路についた。
この時黒子が思い悩んだ表情をしていたことに小金井は気づかなかった。
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