黒子のバスケ

□山猫、夜叉にロックオンされる
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誠凛と洛山の合同合宿の後半に設けられた自主練習の時間、実渕は小金井に声をかけた。

「小金井君、良かったら1on1しない?」

「俺と?良いけど…」


小金井は少し意外そうな顔をしながらも頷いた。


いくらWC優勝校の選手とはいえ、相手は無冠の五将と呼ばれた一人である。
結果は予想の範囲内だった。

「っはぁ、やっぱつえーな…。」

小金井が肩を弾ませながら実渕を睨む。
これで何回目だろうか。
何回やっても結果は同じ実渕の勝ちだ。
周りで各々練習している者がチラチラと此方を窺っている。
それでも誰も止めはしない。
WCの決勝戦を知っているからだ。
あの試合で小金井は実渕を後1歩のところまで追い詰めた。
その1歩を詰める可能性を小金井は秘めているかもしれない。
皆そう考えて口出しはせず静観している。
例え現状は小金井のぼろ負けだとしても。

「こんなもんなわけ?期待外れだったかしら。」

「にゃんだと!!」

WCのあの舞台で初めて虚空を見破った小金井の事を実渕は高く評価していた。
しかし今、それは過大評価だったのでは無いかと思う。

「次、止められなかったらもう終わりにしましょう。」

一方的にそう言ってから実渕はボールを構えた。
フェイクを入れてからドライブの姿勢に入る。
敢えて、小金井の出方は窺わず一歩目からトップスピードで小金井を抜き去ろうとドリブルを始める。
すると、ぞわりと背筋を震わせるような気配を感じ自分の判断が失敗だったと悟る。

「ッ!!」

フェイクを見破った小金井の手がボールに迫る。
慌てて切り返そうとするが間に合わず、ボールは実渕の手を離れ床を転がった。
転がったボールを見て一瞬呆けた実渕だが我に返ると、先ほどまでとは変わった気配に気付き口角を上げる。
今、自分が目の前の相手と戦えることに歓喜に近い興奮を覚えた。

「やっぱり私の見込んだ通りね 」

ちらちと小金井に視線をやると、そこには獲物を狩らんとする山猫の眼があった。
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