黒子のバスケ

□武器なんてなくても
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「みんな帰っちゃったなー。水戸部」

練習後の夕暮れの体育館で残っているのはいつの間にか水戸部と小金井だけになっていた。
いつもは日向や伊月などが最後まで残っているのだが今日は偶々居なかった。

〔そろそろ帰る?〕

「ん〜、このシュートが入ったら!」

そう言って放ったシュートはリングにすら届かず落ちた。
エアーシュートだ。

「…………」

ここにリコがいればロードワークを言い渡されていただろう。

「あはは…」

ごまかすように小金井が笑う。
しかしその笑顔はどこかぎこちない。

いきなり水戸部が小金井に近寄り母が子にするように優しく抱きしめた。

「えっ…?ちょっ…水戸部?」

いきなりの事に驚きじたばたと暴れる。

〔最近調子悪いよ?辛いことがあるなら言って〕

「流石水戸部。俺のことお見通しなんだな」

暴れるのを止め水戸部に持たれかかった。

「俺このチームでバスケするの好きなんだ。
負けるのは嫌だけど。
誠凛でバスケするの凄い好き。」

〔知ってる。コガは皆に負けない位バスケ好きだよね〕

「うん。大好き。俺にはキセキみたいな才能も皆みたいなすごい能力もないけど好きなんだ。」

だけどさ、と
小金井が水戸部の肩に顔をうずめる。

「誠凛は日本一を目指してる。強くならなきゃダメなんだ。」

〔そうだね。日本一になる為に強くならないと〕

「でも、俺出来ないんだ自分が強くなるイメージが」

〔イメージ?〕

「俺が器用貧乏卒業してなんか必殺技や能力身に付けるイメージが全然見えない。」

なんでも出来るけど何にも出来ない。
ずっとそのままな気がしていた。

「わかんないんだ。器用貧乏の俺の武器ってなんだろ?
俺って武器になるもんないんじゃないのかな?水戸部」

〔大丈夫だよ〕

「へっ?」

小金井がぽかんとした表情をだす。

〔今は武器なんかなくても大丈夫。
がんばって努力しているコガは強くなる。〕

「水戸部…」

〔コガの努力は俺が良く知ってるから。
その俺が言うんだから大丈夫。〕

「そっか…。俺水戸部に太鼓判押してもらえたな!」

いつもと同じ眩しいぐらい明るい笑顔で笑った。

(やっぱりコガは笑ってるのが一番可愛いよ)

「水戸部ッ!」

小金井が真っ赤になりながらポコポコと水戸部を叩いた。


きっと少しずつだけど強くなる。
それを信じて頑張ろう
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