黒子のバスケ
□夢の中でさようなら
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「ここは…」
気がついたら知らない場所にいた。
知ってるようで知らない場所。
懐かしく愛しい場所。
ゆらゆらと草が揺れ、風が頬を優しく撫でる。
あぁ、ここは夢の中だ。
「ありゃ?黒子?」
突然現れたのは猫の様な顔つきが特徴的な先輩だった。
「小金井先輩?どうしてここに…?」
ここが黒子の夢の中ならここには黒子しかいないはず。
「そーかぁ〜。黒子かぁ…。水戸部じゃな
いって事は……、ふむふむ」
小金井先輩は勝手になにやら考察を始めたようだ。
「あの…小金井先輩?」
小金井先輩はなにか解っているようだが自分は全く解らない 。
「よしっ!最期なんだし腹括るか!」
「えっ!?だから少しは説明してください」
黒子の話は全く聞いてない様子だ。
「あのな…黒子。俺、ずっとお前に憧れて
たんだ。
練習中とか時間があればお前の事見てたんだ。
無意識な。
だから思ってたんだ。
ああ、俺こいつに憧れてるんだって」
いつになく真剣な小金井に黒子は何も言えなくなった。
いつも辛い時にはしんどいと嘆き、楽しむ時には一番はしゃぐ。
自分を抑えない人だと思ってた。
年齢相応の落ち着きより幼さの方がよく出
る人なのだと感じたがそれは勘違いだったのかも知れない。
「でも、さっき神様に最期に大好きな人に会わせて下さいって頼んで解ったんだ。俺の「大好き」はお前だったんだよ。」
「えっ…先輩…」
驚きや嬉しさや色々なものが入り混じって身体が熱くなり言葉が出ない。
「黒子今までありがとう。
黒子のことが大好きです。
最期に言えて良かった。」
小金井が笑った。
今までで一番きれいな笑顔だった。
「待って下さい先輩。最期ってなんですか?どういう―」
黒子の唇に柔らかいものが触れた。
「いきなりごめん。
でも最期だし夢だから許してくれよな。
もっと早く気づけば良かった。
これからも皆でバスケ頑張れよ。」