黒子のバスケ
□6番の理由
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誠凛に入学してから一ヶ月の月日が経とうとしていた頃のことだった。
「小金井君、背番号何番がいい?」
練習が終わり一息ついたところでリコがいきなりたずねてきた。
「えっ、背番号?」
そういえば部活の最初に皆でユニフォームのデザインについて相談していたことを思い出す。
普段ならテンション高く話題に突っ込んでいっただろう。
しかし今回はそんな気分になれず、おとなしく話をきいていただけだった。
日本一を目指す。
その夢を実現する為誠凛高校バスケ部の練習はハードだった。
(背番号なんてもらえる立場なのかなぁ…)
初心者の小金井だが持ち前の器用さでシュートもドリブルもパスもある程度はこなせていた。
少なくとも基礎練なら問題なくついていけているだろう。
問題は最近始まった3on3だ。
相手の陣地に侵入しシュートを決める。
当然至近距離にディフェンスは来る。
そのプレッシャーに小金井は勝てなかった。
ディフェンスが来るとドリブルもシュートも出来ず精度の悪いパスしか出来ない。
どんな技術も試合で使えなければ意味がない。
これではチームに貢献するどころかただの足手まといだ。
同じ初心者の土田はその体格を生かしてリバウンドの腕を磨いているが、部内で一番小さい小金井には向いていないだろう。
「小金井君?」
ずっと黙ったままの小金井の顔をリコが不思議そうにのぞきこんだ。
「あっ!ゴメンゴメン!じゃあ俺6番で!」
一番下手な自分は一番後ろの番号がいいだろう。
一番最後で、と言うと感じ悪いと思い数字で応える。
「わかったわ6番ね。後で変更とか無しだからね!」
決定事項よ!と念を押してリコは去っていった。
(いつもの俺なら調子のって1番で!って言うのになぁ…)
小金井はいつもふざけていいところはふざけてきた。
そうすればチームに会話が増えて明るくなると信じている。
ツッコミとキャプテンで忙しい日向。
とても天然な木吉。
いつも冷静なのにいきなりダジャレが飛び出す伊月。
無口で心配性な水戸部。
穏やかな性格の土田。
この誠凛バスケ部でお調子者キャラができるのは自分だろう。
自分がこのチームを明るくしたい。
しかし自分が下手くそな所為で日向やリコかお怒りの声が飛んでくるのが現実だ。
主将と監督が怒ればチームの雰囲気も悪くなる。
バスケが下手な自分はチームに必要なのだろうか?
みんなは自分を認めてくれるだろうか?
(みんな良いやつだし大丈夫だよな…)
小金井は帰る支度をするために部室にむかった。