黒子のバスケ

□山猫、夜叉にロックオンされる
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「あら。」

自主練習の時間が終わり、夕食と入浴を済ませ飲み物を買おうと自販機へ向かった実渕はばったりと小金井と顔を会わせた。

「あっ、お疲れ」

挨拶も早々に、実渕に気づいた小金井はその場を早足で去ろうとした。
実渕はその表情がどこか暗いことに気づく。

「ねぇ」

実渕は横を通り過ぎようとした小金井の腕を咄嗟に掴んだ。
小金井がびくりと身体を震わせる。

「っなに?なんか用?」

悪意があるわけでは無いだろうが言い方に少し棘があった。
小金井が実渕にこのような態度をとるには心当たりがある。
自主練習の時の1on1だ。
いくら小金井が野性に目覚めども実渕との実力差は簡単に埋まるものではなかった。
小金井は実渕に全敗したのである。
別に実渕が悪い訳ではないが圧倒的な実力で負かされた小金井がついこんな態度をとってしまうのも解らなくもない。
小金井も自分の態度に非があるのは解っているのか気まずそうに視線を逸らす。
そんな小金井の表情ひとつひとつを実渕はじっくりと観察する。

「あなた、そんな顔もするのね。」

咄嗟に引き止めてしまった手前何か言わなければと思って口をついたのはこの言葉だった。

「へっ…?」

小金井にとっても予想外の言葉だったのかきょとんとした目でこちらを見ている。
そんな仕草にかわいい、と言葉がつい零れる。
小金井の頬に空いている方の手を添え輪郭をなぞりながら、妖艶な笑みを浮かべた。

「私、あなたに増々興味が湧いて来ちゃった 」

最初は決勝の相手チームの控えとしか見ておらず全く興味が無かった。
しかし試合をしてバスケ選手として興味をもった。
そして今、目の前でくるくると変わる表情を見て小金井慎二という存在に興味をもったのだ。

「えっ…、はっ…?ん?」

小金井は完全には状況を把握できていないものの危機感だけは感じたのか後ろに下がろうとするが実渕が腕を掴んでいるため逃げられない。

「だから、ね?」

ぐい、と腕を引き口を小金井の耳元に寄せる。

「あなたを欲しくなっちゃった」

耳元で囁くように呟く。

「はぁぁぁぁぁ!?えっ、ちょっ、なっ!?」

小金井は何か言おうとするが混乱しているのか口をパクパクさせている。
そんな小金井を見て実渕は笑みを浮かべる。

(試合の時とのこのギャップが可愛いわね)
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