パロ
□武器と職人で喧嘩なう
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「おい、あっさり抜けたぞ。」
笠松は手に収めた聖剣を掲げながら宮地達の方を見る。
「おう、凄いな…」
笠松が選ばれた者なのか、それとも案外誰にでも抜けるのか定かでないが何となく後者な気がしてしまうのが悲しい。
「でも流石聖剣ですね。刀身に傷ひとつ無い。」
黒子が聖剣を検分していると剣が輝き出した。
「うおっ!!」
驚いた笠松が咄嗟に剣を手放した。
剣はそのまま宙に上がり光に包まれる。
『妖精の住む洞窟へようこそッス!選ばれし勇者方!!』
そんな声とともに、とても美しく整った顔立ちの金髪の少年が姿を現した。
「どーも!聖剣の黄瀬涼太ッス!気軽に涼太君って呼んで欲しいッス!」
シャララ♪と効果音が聞こえそうなスマイルを浮かべ聖剣の黄瀬はポーズを決めた。
そのポーズも板についているのがどこか腹立たしい。
「いやー、最近誰も来てくれなくてほんとに寂しかったんッスよー。来たと思っても直ぐに俺をここに戻しちゃうし。」
ぺらぺらと黄瀬は色々喋りたてるが笠松達は頭がついていかない。
「あの…、」
このままではいけないと感じた黒子がおずおずと手を上げた。
「君が聖剣なんですよね…?」
そうッス!!と眩しい笑顔で黄瀬が答えると黒子はそのまま質問を続けた。
「では何故聖剣ともあろう君がこんな洞窟にいるんですか?君が本の通りの力ならパートナーぐらい簡単に決まりそうなのに。」
皆が訊きたかったことを一気に言ってくれた黒子にさり気なく尊敬の視線が集まる。
黄瀬のマシンガントークを止めるのは容易では無いと皆が感じ取っていた。
「…俺の力が強すぎて扱えなかったッスよ。折角パートナーになっても2,3日で俺をここに戻しに来るッス…。」
もし黄瀬が犬なら尻尾と耳が垂れていただろう。
そう思う程に彼はションボリと項垂れた。
よほど今まで職人に扱ってもらえなかった事がショックなのだろう。
「そんなに強力な武器なのか…」
「そりゃ俺は聖剣ッスからね!!並みの職人には扱えないッス!!」
誰も扱えない武器、そう聞くと使ってみたいと思うのが職人の性だろう。
それに、聖剣があれば魔女達にも対抗できるのではないか。
欲しい。
その場に居た四人全員が思った。