絡繰仕掛の継接ぎ喋々
□始まりの音と青の狂気
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「…ん……っく…」
躯が揺さぶられている…気がする。
「……っ!…っくん……!…」
甘い馨り。微睡み。
心地良い。暖かい。
今暫く……
「――…がっくんっ!!!!」
「―――Σっ!!?」
吐息がかかる程の至近距離に、少々困ったようなKAITO殿の顔。
―――何だ?一体何が起きたと云うのだ?
「あ、起きた…良かった、何処も悪い所はないよね?」
「ん?うむ…」
辺りを見回す。見知らぬ室内。
「…此処は?」
「ぉr…僕の部屋。がっくんの部屋の方が遠かったから、此方に運んだんだ」
「…運n…?」
我を運んだ?何故だ?……駄目だ上手く思考が纏まらん。
「………あぁ、やっぱり爆睡してたんだねw記憶装置の起動に手間取ってるみたいだし」
―――………思い出した。「仕事」帰りの車内で主殿とKAITO殿の会話を聞くとは無しに聞いていたが…途中で記憶が途切れておる。
「……すまぬ。迷惑をかけた」
「ふふw別に構わないよ…僕もがっくんに頼る事多いし、お互い様ってやつだね」
そう云い、KAITO殿は手にしていたカップに口を付けた。
「……そういえば、2人きりになるのってこれが初めてじゃないかな?」
「……む、確かに。」
主殿の元へ参りそろそろ1月程過ぎようとしているが、意外にもKAITO殿とゆっくり言葉を交わした記憶は数少ない。
「う〜ん……この際だから、一応云っておきたい事があるんだけど…良いかな?」
口元に空いた手を当て、考える仕種をしていたKAITO殿が小首を傾げて此方を顧みた。
「……何の話だ?」
この後は確か何の予定も無かった。「仕事」終わりの主殿の世話は、先輩方の仕事故我らの出る幕はない。
「………うん、ちょっと込み入った話」
先を促すと、KAITO殿は苦笑を浮かべてカップを机に置いた。
「……がっくんはさ、僕以外のLoid全員と交流…まではいかなくても面識位はあるかな?」
ゆっくり言葉を選ぶ様かけられた問に、首肯する。
「………それでね、まさかとは思ったけど……やっぱりだったよ。」
「…………?」
何だ?彼は何が云いたい?
得体の知れぬ悪寒が背筋を走った気がした。
自嘲ともとれる笑みを浮かべる彼を見詰める。
「……あぁ、でも1人例外が居たかな。でもあの仔はおr……僕の亜種だし、「それ」がその仔の性質だし……」
「……KAITO、殿?」
恐る恐る声をかける。全く要領を得ぬ言葉ばかりで話が見えぬのだ。
「ん、ごめん。…で、あ〜…やっぱりって云うのは僕が他のLoid違うって事」
「違う?」
「そぅ、違うんだ。僕より先に産まれためーちゃんに無かったのがちょっと不思議だけど……」
そこで一旦言葉を切り、我の座るベッドの足元に腰掛けた。
「――…「自閉性鳥籠依存症候群」」
暫の沈黙の後、紡がれたのは聞き覚えのある名称。
「それは……」
「識ってるよね。マスターが所属する会社にその患者と予備軍が所属してる。」
知識としては識っている。精神を病み、特定の相手に依存し……最悪、死に至る恐ろしい病。
しかし、本当の意味で理解してはいない。
「……しかしそれとKAITO殿の話に何の関係が?」
「うん。僕はオリジナル唯一の予備軍なんだ。」
――――は?
「うんまぁ、当然の反応だよね。……尺の関係もあるから手短に話すけど…」
………KAITO殿が?自閉性鳥籠依存症候群予備軍?何故?
「……僕はね。がっくんの事好きだよ?」
「………はぃ?」
思考回路が機能不全に陥りそうだ。