シンジャ小説


□惚れたが負け
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朝のHR、俺は珍しく寝不足で一時限目が始まるまで眠るつもりで、机に突っ伏していた。

眠さで意識が朦朧としている中、転校生であろう女の子が挨拶をしている声が聞こえる。

うるさいな、朝なんだからゆっくり眠らせてくれよ。

俺はまだ眠いんだ。

あぁ、でもお前が一緒に眠ってくれるのなら許そう。

そんな冗談を心の中、一人でやりとりをしながら深い眠りに落ちた。








ゆさゆさと体を揺さぶられている。

…折角、気持ち良く夢を満喫していたのに。

………久々にあいつに会えたのに。

「……て」

て?

てってなんだ、てって。

「起きてください」

あぁ、そういうことか。

ほら、俺は起きているじゃないか。

体以外はだけど。

頼むから放っておいてくれよ。

「先生が来てしまいますよ?」

お前は俺のお母さんかよ、…どっちかっていうと母さんよりあいつに似ているか。

「ほら早く」

「〜〜〜〜っ!分かったよ!起きればいいんだろ!?」

そう言うのと同時に、起こしてきた相手と目が合う。

夜の色だ。

全てを包み込んでくれるような。

いつも側にいたあいつと同じ。

髪もそうだ。

髪の色も、少しボサボサな感じもそっくりで。

触りたくなる。

低い鼻に可愛らしくあるそばかす。

唯一違うのは体のつくりだけだろうか。

男ではなく、女の体だ。

…ん?

「………何か?」

「……お…んな…?」

一気に気が遠くなって、周りの反応を他所に俺はそのまま意識を失った。
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