シンジャ小説
□惚れたが負け
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「あの…どうしたんですか…?」
人気のないところまでジャーファルの腕を掴みながら連れて行くと、おずおずとした声で尋ねられる。
「…あいつは誰だ」
怒りを抑えるようにしたが、どうしても刺々しい口調になってしまった。
「え?…あ…えと…同級生…です?」
ジャーファルは少し首を傾げながら自信がなさそうに答えた。
「なんで疑問系なんだよ…」
自分の勘違いだったことに安心しながら、言葉を続ける。
「よく知らない方なので…聞いてきますか?」
そう言いながらジャーファルはまた元居た下駄箱の方向へ向かおうとした。
「やめろ!」
思わず大きめな声が出てしまった。
「…はい。…あの…」
「…どうした?」
今度こそ刺々しい口調ではなくなったが、逆に動揺したようになってしまう。
「貴方は…同じクラスの方ですよね?…御体は大丈夫ですか…?」
「…あぁ」
まぁ、目の前で倒られたんだ。
心配も多少はしてくれるだろう。
赤の他人だとしても。
保健室に見舞いに来てくれなかったことで、お前が記憶を持っていないことはよく分かった。
「それと…その…可笑しなことを言うようなんですが…」
「……なんだ?」
思わず期待をしてしまう。
以前貴方とお会いしたことはありますか?とか貴方はシンですか?
そんな夢みたいなことを口にしてくれることを。
じっとジャーファルを見つめていると、決心したのかジャーファルの口が開いた。
「………貴方はシンドバッドさんですか…?」