シンジャ小説


□惚れたが負け
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保健室を後にし、誰もいない教室から鞄を取りに行き、それから下駄箱へ向かう。

階段をゆったりと降りていているとちらりと銀色が目に入り、直ぐ様引き付けられるようにそちらの方向へ向かう。

もしかしたらジャーファルじゃないかもしれない、という考えが一瞬思い浮かんだがすぐに消えた。

あいつで間違いない。

あんなに綺麗な髪色はあいつ以外見たことがないのだから。

心と同じように進める足もジャーファルに会いたいというかのようにどんどん早くなっていく。

実際に追い付くまでの時間は極僅かだったのだろうが、何十分も経ったかのように思えた。

心臓がうるさい。

追い付いた先にいた彼女は見知らぬ男と一緒に歩いていた。

上履きの色からして俺たちと同じ学年のようだ。

男の外見はある程度はモテそうな顔つき、身長だが俺と比べてしまえば大して良くはない。

その程度の男が俺のジャーファルのすぐ側にいて、俺の機嫌が悪くならない筈がなかった。

「ジャーファル」

無意識に出た声はいつもよりずっと低く、冷たいように思えるものだった。

びくっと彼女は反応すると、怪訝そうな顔をしてこちらへと振り向く。

「…何ですか?」

明らかに態度も声も警戒したものだったが、気にせず彼女の腕を掴む。

「行くぞ」

「「え…」」

俺の言葉に驚いた二人が発した言葉のタイミングが同時なのことが、更に苛つかせた。
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