ワンパンマン
□フライングはノー
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私とソニックの関係を表すのなら何が適切なのだろうか。
初めての印象は、とにかく《気に食わない》という表も裏もない感情だったが、なんやかんや絆されてしまった今、《気に食わない》の他に微妙な感情が渦巻いている。
今日も今日とて、ソニックはいつの間にか家に侵入してきていた。
「…相変わらず、理解できない絵を描いているな」
苦々しい、とでも言いたげな声が頭上から響いたとしても、私はパソコンとのにらめっこはやめられない。締切が近いのだ。
「じゃあ見なきゃいいでしょ」
「おいはみ出したぞ」
「あんたがいるからでしょーが!」
「俺に気付かないくらいの集中力さえないのか!」
ハッと笑われてピキリと青筋がたつ。
気づかなかったら気付かなかったで拗ねるのだから面倒くさい。
「はいはいわるうござんした。あと五分で仕上げるからそれまでコーヒーでも淹れてくださーい。あ、角砂糖一個ね」
「べ、別に俺はお前なんか待ってないぞ!思い上がりが甚だしいやつめ!」
そういいながらキッチンに向かった彼を、私はようやく、パソコンから目を離して見つめた。
うーん、お互いに素直じゃないなあ。
***
「終わったよー」
「ふん。三十秒オーバーだな」
「パソコンをシャットダウンしてる時間ですぅー」
口は動くが、徹夜二日目なせいでふらっふらだ。めっちゃ眠い。でもソニックがいる。寝れない。何されるかわからない。
「…そういえば、この前本屋に行ったぞ」
「え、行くんだ」
途端に紫色の目が不機嫌に細められて、慌ててコーヒーをすすった。おー、こわ。
「その中にやたらと目立つ装飾の本があってな」
「うん」
「――お前の絵だった」
あ、死ぬ。
そんな言葉が浮かんだ。自然に浮かんだ。
なんていうか私は、彼の《デレ》にすさまじく弱い。
やめろ、ときめき死ぬ。
真っ赤になってる私に気付いているのかいないのか、また彼はつづけた。
「まあ、隣にあった「らのべ」の絵よりは良いんじゃないか」
私はカップを彼に投げつけた。
死ねる。