ワンパンマン

□とある女の愚痴
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こんにちは。はじめまして。私の名前はシオリというの。

ごめんね、こんな夜中に呼び出して。
ほら、彼が教えてくれたのがさっきだったから。気まぐれだよね、本当。ここに来てから何年も経っているのに。

ああ、彼っていうのはあなたの主人でもあるボロス様のことよ。…様付けなんて普段するわけないじゃない。皮肉よ、ひ・に・く。

じゃあちょっと、しゃべらせてね。



初めて彼と会ったのは、腐れ縁のサイタマの家にお邪魔した時だった。彼氏の愚痴を話に来たときだったかな?もうすぐ結婚しようかなーなんて、私が勝手に思っていた時だった。

初めはびっくりしたよ、だって、ほら、イケメンだったし。…あそっか。知らないんだっけ。
彼ね、イケメンなんだよ。人型だと。

ででで、まあ彼がなんとなく私に好意を持ってくれたことはわかったのよ。やたら接近してくるし、触ってくるしね。でも私。イケメン苦手なのよ。なんかこう…恐れ多いっていうか。

だから彼とは友人でいるつもりだった。

ところが、その三か月後。地球の滅亡が決まったってわけ。
政府もひどいよねー、だって残された時間がたったの一か月だったもん。
え、原因?地球が内部から崩壊したー、とかなんとか。

私は即効で彼氏と結婚したかった。
未婚のまま死にたくなかったの。
だけどまあ…実は彼、結婚詐欺師でさあ…。
逃げられちゃった。お金も家具もとられて。
まったく。滅び行く星で何を期待したかったんだろうね。バカみたい。

そんなわけで、怒ればいいんだか呆れればいいのかわからないまま、なんとか一週間過ぎた。
すでに機能してる機関はなかったから、ちょっと盗んだりしてね。やけになっていたから罪悪感なんてなかった。

二週間目に突入したときだった。
家に帰ると、当たり前の顔でボロスがいた。

「ボロスさん、どうしてここに…」

「…貴様に謝りたいことがあってな」

一瞬、耳を疑ったわ。
だって初対面の時はすごく丁寧な方だったから。
貴様、なんて言いながら、謝りたい、だなんて。

「まず、これを見ろ」

「…っな、なな、なななな…!!」

ピラリと出されたのは…婚姻届だった。
私の名前の隣にには、「ボロス」

「ふ、ふ、ふざけてんじゃないわよ!!私、こんなの書いた覚えはないわ!」

「…なんといったか、あの犯罪者の男。彼が持っていたのでだな。これ幸いと拝借したのだ」

「っ」

私、覚えがあったの。
元彼氏に、結婚を迫ったとき、自分の名前を書いたものを出したのよ。まさかこんな形で帰ってくるなんて思ってもいなかった。

「これは法的に見れば十分有効だ。貴様は俺の妻となった」

確かに、言い逃れができなかった。

「っ何が、目的なの…」

「…あのみょうちくりん博士を説得するにはこれくらいしないとダメだった。さて、シオリ。俺は仕事で【ちょっと遠いところ】に行かなくてはならない。それについてきてほしい。着いて行った先で、離婚なりすればいい」

本当に、彼の目的がわからなかった。
でも私には選択肢なんてなかったから、黙ってうなずいたわ。

そして私はここ−−宇宙に来たの。
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