ワンパンマン
□夢の続きをくれたのは、あなただけ
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「ボロス様、起きてください」
「…朝か」
「はい、明日の出撃のために今日は準備してください」
「そうか」
ベットの中でニヤリとボロス様は笑われた。
「ついに、着くのだな」
明日、彼は長年の夢を叶えに行く。
嬉しいはずだ。主の夢は従の夢。それがかなう。
それなのに、なぜか嫌な予感が止まらない。
絶対的にな強さ。
向上心。
カリスマ性。
多くの者を惹きつけた。
多くの者を殺した。
そのツケが回ってくるとでもいうのか。
「…ばかばかしい」
ボロス様が負けるはずがないのだ。
「シオリ、この戦に勝ったら好きなものを与えよう」
「は…?」
「なんでも与えてやる。考えてみれば、お前は俺の秘書なはずなのに何も欲しがらない。何も与えていない。どうだ、何がいい?」
「何がいい、と言われましても…」
ああ、困る。だって、私は、彼の横にいることだけが幸せなのだから。
「また困った顔をするのだな…まあいい。帰ってきてからまた考えろ」
「いえ、本当に私は」
「与えたいのだ。俺が、お前に」
たくましい背中をさらしながら、ニヤリと。それは先ほどとはまた違う、たくらんだような。
「お前は特別だからな」
「それは…どういう」
「ボロス様、朝食にございます」
「御苦労」
私の必死な質問は朝食に邪魔された。
「シオリ様も会議が…」
「わかりました。それではボロス様、また後ほど」
「少し待て」
「!ちょっ」
勢いよくひっぱられた腕とは反するように、唇への衝撃はふんわり、優しかった。
「…きっともう帰ってくるまで会えないだろう。お前も、気をつけておけ」
耳元でかすれた声で言わないで。
「っはい」
扉をくぐってもまだドキドキしていた。
ああ、できるなら。私は貴方の特別に、しっかりとした位置でいたい。
胸を張って、特別だと断言できるように。
それは、地球に到着する、一日前のことでした。
Title by 確かに恋だった