ワンパンマン
□願わくば君に
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戯言というには、あまりにも重たかった。
無視できるほど、自分も大人ではなかった。
でも、今の彼女にはそれすら鬱陶しいようだ。
「いい、ジェノス君。消した灯りはもうつかないの。わかる?」
自分のサイボークの顔よりもカチコチに固まった笑顔で、苛立たしげに髪の毛をクシャリと握りつぶした。
「だからもう無理だったんだって。ほら、仕事ってさストレスの塊じゃん?スリリングな恋とか、もう一種対処法なんだよ。だから、捨てられたんじゃなくて終わったの。それだけなんだよ」
「無理をしないでください」
「無理なんじゃないよ」
「…今の貴方はまるで子供です」
その言葉がトリガーだったようだ。
「…じゃあアンタは大人だっていいたいの!?何を知ってるの?何ができるの!?アンタなんか復讐だけしか考えてない馬鹿にしか見えない!ジェノス君なんて」
はぁ、と吐いた息が震えていた。どちらの吐息かは、もう知らない。
「ジェノス君なんて、大っきらい!」
その瞬間彼女は膝から崩れ落ちて、細くて脆い身体を痙攣させた。
「…嘘だよ。うそ、だよ?」
「知ってます。大丈夫ですよ」
「嘘、なの。平気なわけ、なくって…」
「大丈夫です」
彼女の手を包んで。
「俺だけが知ってますよ?」
その言葉に決壊した彼女を、優しく、壊さないように抱きしめた。
できればこのまま。
「――ここまで堕ちてきてほしいですね」
Title by ligament