ワンパンマン
□黒い羽
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コウモリというのは翼はあっても羽はない。ということはコウモリの翼をもつ悪魔にも羽はない。
「と、思っていたんですが」
手にとったのは黒い羽。
「気のせいだったみたいですね」
「おい」
不機嫌そうに彼はうなった。
「人を悪魔扱いするな。そしてそれは今日倒した怪人のものだ」
「うふふ。冗談ですよ、ゾンビマンさん」
「ったく。お前のは冗談なんだか嫌みなんだかわかんねえな」
「両方混ぜてます」
「悪魔なのはお前だよ」
不機嫌を通り抜けて苦笑へと変わったのを見てようやく近づく。自分でやっておいてなんだが、不機嫌な彼はあまり好きではない。
持っていた羽をゾンビマンさんに近づける。
「ですがゾンビマンさんに生えるとしたら」
「生えねえよ」
「もしもの話です。生えるなら、カラスの方が似合っています」
「そうかよ」
黒と紫の大きな翼を頭に描く。ほら、美しい。
この世界の道理から最も外れた位置にいることを象徴するかのように。
「もし生えたら私を空まで連れて行ってくださいね」
「ああ、連れて行って落とすわ」
Title by ligament