ワンパンマン
□宇宙人拾いました。2
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ソレはゆっくりと目を覚ました。
広がる世界は、ソレが眠りにつく前と何ら変わりない闇だった。
ぼんやりする頭で、ソレは考える。
あれからどれだけ経ったことやら。
それから笑った。
ソレにとって重要なのはどれだけ『経った』かではなく、『変わった』かだ。
安っぽい考えをするようになったなあ。ということはどうやら随分とあの戦闘馬鹿の友人に毒されてきたらしい。
「…ん?」
その友人に会いに行こうと気配を探って、首をかしげた。
珍しいことに、彼は一つの星に定住しているようだった。しかも騒ぎを起こさず。
しかもその星――何やらわちゃわちゃと生命がひしめきあっていて、大変興味深い。
しかし、その多くの生命の中に、彼の部下の気配はどこにも見つからない。
それどころか、この世界にすらいないようである。
「そっかー。ゲリュちゃん死んじゃったんだー」
残念残念。
何事もないかのように言いながら。
ソレは空間を『曲げだした』。
無論、力づくではない。それどころかソレは、どっかりと空中に腰を下ろしているだけである。
「ま、一回怒られたけどいいでしょ。たまには宇宙もかき混ぜてあげないとねン」
かき混ぜるどころか、一気に無限とも言える生物が死滅したのだが、ソレは一向に気にしていないようであった。
結果。
宇宙はU型に曲げられ、星とソレの距離は千分の一まで縮んだ。
「こんなものかな?大分星に近づけたなあ」
近づけたといっても、まだまだ見える範囲にはいない。
が、そんなこと、ソレにとって些細なようだった。
「じゃ、今すぐいきますよーん」
ボロスちゃん
笑いながら、ソレは地球に向けて走り出した。
***
ぶるりと身体が震えた。
「?」
ミーンミンミンとうるさい合唱が響く季節に一気に鳥肌とは。クーラーにあたりすぎたかもしれない。
まあ暑いんだけどね。
「ボロスー」
図書館の二階で本を読んでいた彼を小声で呼び止める。
ふと顔をあげた彼は、まあ太陽も霞むほどの美しさで――。
「遅い」
が、ちょっぴり短気なところと仏頂面がいやでも人間らしさを漂わせる。
と、いっても彼は地球でいうところの人間ではない。
「いやあ、ごめんね。ちょっと社長と話し込んじゃって」
「…どうせ休日の予定でも立てていたんだろ。携帯でやれ」
「うぐっ」
ギロリ、と彼は『一つ目』で睨みつけてきた。
「って外でその目禁止!!」
「…ちっ」
ボロス
少し短気で仏頂面。
好きなものは日本食。
嫌いなものはタコ。
そして、宇宙人。
数ヶ月前から、お付き合いさせてもらっています。