ワンパンマン

□とある女の愚痴
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唖然とした。茫然とした。
【ちょっと遠いところ】が宇宙だなんて、聞いてなかったもの。
離婚?できるわけないじゃない。こんな、右向いても左向いても真黒な世界に一人きりだなんて。
あなたも知っているでしょう。この1000人しか乗れない宇宙船にいるのは将来有望な科学者とその伴侶だけ。そのために、私を結婚させたのよ、こんな大学だって普通の成績で卒業した、この、私を、生き残らすために!!

そして彼は私に言ったの。

「もう一つ。謝っておこう」

「…なによ」

ちょっとやそっとのことじゃ驚かない自信があったわ。

「俺がこのロケットに乗せてもらえた理由だ。俺は、科学者ではない」

「っえ」

「俺は…」

その時、私は彼の正体を知ったのよ。
メキメキと不気味な音をたてながら変化していく彼を、私は卒倒しそうな頭で見つめた。

「俺は【元】宇宙の覇者。このロケットの、船長だ」

ハシャ、歯医者、覇者。

今度こそ私は、気を失ったわ。


彼は基本、宇宙を科学者たちに教えるために外出しているの。夜は帰ってくるけどね。
今でも朝起きた時、あの大きな一つ目が見えると顔をしかめてしまう。

彼は、ボロスは私が携帯で「帰ってくんな」ってうったら本当に帰ってこないし、「帰ってきてもいい」ってうったらうれしそうな雰囲気で帰ってくる。帰ってきた日は一緒に寝る。…夜の営みはしないわよ。

でも基本的暇なのよね。地球からもってきた紙の本なんてそらで暗唱できるわ。時々、とってもむなしくてさみしい。だって、この宇宙船がどこに行くかなんて、ボロスでも知らないんですもの。
だから彼は、研究者たちの成果をいちはやく知っては私に伝えてくれる。中々面白いのよ、それ。それ以上にボロスの一生聞いてる方が面白いけどね。

…え、「相思相愛」?やめてよ。ボロスの方はまだしも、私の方はサッパリなんだから。
それでも付き合い続けてる理由は…さっきも言った通り、こんな広い世界で独りぼっちにされるのが嫌だからよ。
あんな一つ目でも、目が覚めたとき見えたらほっとするもの。

…そろそろ切るわね。あなたがロボットだなんて信じられなかったわ。また電話する。
まだ早い?ああ、確かにね。でもそろそろボロスが帰ってくるのよ。
彼が好きなお味噌汁作ってあげなきゃ。

じゃあね。
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